マイクロン株に1,000ドル目標 D.A.デビッドソンが示した強気シナリオ

マイクロン・テクノロジー(MU)に対して、ウォール街から非常に強気な見方が示されました。D.A.デビッドソンのアナリストであるギル・ルリア氏は、同社株のカバレッジを「買い」で開始し、目標株価を1,000ドルに設定しました。

バロンズによると、この1,000ドルという目標株価は、ファクトセットが追跡するウォール街のアナリストの中で最も高い水準です。マイクロン株はすでに過去12カ月で6倍以上に上昇しており、直近4月28日の終値は504.29ドルでした。それでも、ルリア氏の見方では、現在の株価からさらに約2倍の上昇余地があることになります。

一見すると、すでに大きく上がった銘柄に対して1,000ドル目標を掲げるのは大胆に見えます。しかし、その背景には、メモリ半導体市場の構造変化に対する強い確信があります。

1,000ドル目標の根拠は2030年度利益とPER10倍

今回の目標株価で特に注目すべき点は、その算出根拠です。ルリア氏は、マイクロンの2030年度の利益予測に対して、株価収益率(PER)10倍を適用する形で1,000ドルという目標株価を導き出しています。

半導体株の目標株価を考える際、4年以上先の利益を基準にすることは一般的ではありません。それだけに、今回の分析は、現在のAI向けメモリ需要を一時的なブームではなく、長期的に続く構造的な成長トレンドと見ていることを示しています。

通常、AIや半導体関連の成長企業であれば、PER20倍から30倍、あるいはそれ以上の評価を受けることもあります。それに比べると、2030年度利益に対してPER10倍という前提は、決して過度に楽観的な倍率ではありません。

むしろ、ルリア氏の分析は、マイクロンが今後も高水準の利益を維持できるのであれば、現在の市場評価はまだ低すぎる可能性がある、という見方に基づいています。

予想PER6.1倍が示す市場の慎重姿勢

マイクロン株が大きく上昇しているにもかかわらず、現在の予想PERはファクトセット調べで6.1倍にとどまっています。この数字は、一般的な成長株の評価と比べると非常に低い水準です。

なぜこれほど低いPERにとどまっているのでしょうか。理由は、投資家がメモリ半導体市場を依然として「景気循環株」として見ているためです。

メモリ市場はこれまで、需要と供給のバランスが崩れるたびに大きな価格変動を繰り返してきました。需要が弱まれば在庫が積み上がり、DRAMやNANDの価格が急落し、利益が一気に悪化する。この歴史があるため、投資家はマイクロンの現在の高収益を一時的なものと見なしやすいのです。

そのため、株価が大きく上がってもPERは低いままです。市場は、今の利益が長く続かない可能性を織り込んでいると言えます。

しかし、もし現在の利益拡大が単なるサイクルの上振れではなく、AIデータセンター需要による構造的な変化であれば、話は大きく変わります。その場合、マイクロンに対する評価倍率そのものが見直される可能性があります。

長期供給契約がメモリ株の評価を変える可能性

ルリア氏が強調している重要なポイントの一つが、長期供給契約です。マイクロンだけでなく、SKハイニックスやサムスン電子も、大口顧客と長期の供給契約を結んでいると指摘されています。

これは、従来のメモリ市場とは異なる動きです。これまでのメモリ半導体は、価格が上がれば顧客が購入を控え、価格が下がれば需要が戻るという、かなり市況色の強いビジネスでした。

しかし、AIインフラの拡大によって状況は変わりつつあります。大手クラウド企業やAI関連企業にとって、高性能メモリを確保できないことは、データセンター投資やAIサービス展開の遅れにつながります。そのため、多少高い価格でも、安定的に供給を受けることを優先する動きが出ていると考えられます。

長期契約が広がれば、メモリメーカーにとっては売上や利益の見通しが立てやすくなります。これまで投資家が嫌ってきた価格急落リスクや在庫調整リスクが和らぐなら、マイクロンのPERが6倍台にとどまる理由は薄れていきます。

マイクロンはメモリメーカーからAIインフラ企業へ

今回の1,000ドル目標は、単にマイクロン株が割安だというだけの話ではありません。より重要なのは、市場がマイクロンをどのような企業として評価するかという点です。

従来のマイクロンは、DRAMやNANDを手がけるメモリメーカーとして見られてきました。そのため、景気循環やメモリ価格の上下に左右される銘柄という印象が強くありました。

しかし、AIデータセンターの拡大により、高性能メモリはGPUやネットワーク機器と同じく、次世代コンピューティングに欠かせない基盤部品になっています。AIモデルの大規模化、推論需要の増加、データセンター投資の拡大は、メモリ需要を長期的に押し上げる可能性があります。

この変化が本物であれば、マイクロンは単なる市況株ではなく、AIインフラを支える中核企業として再評価される可能性があります。

もちろん、1,000ドルという目標株価には高い成長期待が織り込まれています。AI投資が鈍化した場合や、メモリ各社の供給増加によって価格が下落した場合には、株価が大きく調整するリスクもあります。

それでも、今回のD.A.デビッドソンの強気な見方は、マイクロン株を考えるうえで重要な視点を提示しています。市場がまだメモリ株を過去のサイクル株として評価している一方で、AI時代のメモリ需要はこれまでとは違う可能性があります。

マイクロン株の1,000ドル目標は、単なる強気予想ではなく、メモリ半導体市場の評価軸が変わり始めていることを示す象徴的な数字と言えます。

情報ソース: Barron’s: “Micron Stock Got a Wall Street-High Price Target. Why the Price Can Double.” (By Adam Clark, April 29, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事「「循環株」から「AIインフラ株」へ:マイクロンとサンディスクの驚異的な上昇が示唆する新時代の幕開け

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