なぜブロードコム株は上昇し、エヌビディア株は停滞したのか?AI半導体競争の転換点

昨今のAIブームにおいて、投資家の視線は「汎用GPU」から「カスタムシリコン」へと明確にシフトし始めています。その象徴的な出来事が、3月4日に発表されたブロードコム(AVGO)の2026年第1四半期決算に対する市場の反応です。

直近の決算発表後、エヌビディア(NVDA)の株価が市場の期待に応えきれず停滞したのに対し、ブロードコムは力強い上昇を見せました。この対照的な反応の理由は、単なる数値の良し悪しではなく、収益の持続性に対する確信の差にあります。

ガベリ・ファンズのアナリストは、ブロードコムが2028年までの支出について強い可視性を確保していると指摘しています。これは、数四半期先の予測に留まるエヌビディアなどの他社と比較しても異例の長さです。投資家は目先の利益だけでなく、数年先まで約束された成長シナリオを評価して、同社への資金流入を強めています。

2027年売上高1,000億ドルの野心的な目標

決算数値の発表と同時に注目を集めたのが、ホック・タンCEOによる長期的な成長予測です。同氏は、AI関連の売上高が2027年には1,000億ドルを大幅に超える見通しであると述べました。これは、現在の成長が一時的な特需ではなく、構造的な変化であることを示唆しています。

特に、アルファベット(GOOGL)と共同開発した第7世代TPU「アイアンウッド」の需要は極めて堅調です。これに加え、メタ・プラットフォームズ(META)やオープンAI、アンソロピックといった主要な顧客層が、同社のカスタムチップ(XPU)の採用を拡大しています。これらの企業が自社専用のチップを運用することは、ブロードコムにとって中長期的な安定収益の基盤となります。

割高感を正当化する「カスタムチップ」の優位性

現在、ブロードコムの12ヶ月先予想PER(株価収益率)は27.2倍となっており、エヌビディアの21.6倍や、AMD(AMD)の27倍を上回るプレミアムな評価を受けています。ベンチマーク・リサーチのアナリストであるコーディ・エクリー氏は、同社に対して485ドルの目標株価を設定し、買いの判断を維持しています。

この高いバリュエーションを支えているのが、汎用製品では代替できないカスタムAIチップの強みです。これまではエヌビディアのGPUが支配的だった「学習」の分野においても、ブロードコムのXPUを使用する顧客が増えています。顧客ごとに最適化されたチップを提供することで、コスト効率と性能の両立を支援する同社の戦略は、エヌビディアが直面している競争激化とは一線を画す独自の優位性を構築しています。

ソフトウェア事業への懸念払拭と今後の展望

これまで株価の重石となっていたインフラストラクチャ・ソフトウェア部門についても、明るい材料が見えています。一部の投資家はAIへのシフトがソフトウェア事業に悪影響を及ぼすと懸念していましたが、タンCEOはAIがソフトウェアの稼働を妨げることはないとはっきりと述べています。

一方で、エヌビディアも今月に開催されるGTCカンファレンスにて、推論に特化した新しいプロセッサを発表する準備を進めています。AIインフラ市場の競争は激化していますが、ブロードコムが持つ「特定の巨大テック企業との深い協力関係」と「2028年までを見通す受注の確かさ」は、他社が容易に追随できない同社独自の強力な防壁として機能し続けます。

情報ソース: Barron’s: “Why Broadcom Stock Has Done What Nvidia Couldn’t After Earnings” (By Angela Palumbo and Adam Clark, March 05, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら ブロードコム AVGO

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