今回の決算シーズンが始まるまで、個人消費が弱回る一方で、クラウドコンピューティングやソフトウェアに対する企業の支出は景気が悪いなかでも堅調だという見方が支配的でした。
企業はテクノロジーを活用してより効率的になる方法を模索しているため、この説は極めて論理的だと思われていましたが、今その考え方は完璧ではなかったことが明らかになりつつあります。
クラウドベースのソフトウェア企業は、不況に強い魔法のような力を持っているという説は、今回の決算報告によってその説得力を失ってしまいました。まず、マイクロソフト（MSFT）とアマゾン（AMZN）が決算発表でそれぞれのクラウド事業（Azure と Amazon Web Services）の成長が鈍化しており、クラウドへの支出が減速しつつある兆候を示しました。
さらにそれに追い打ちをかけたのが「クラウドソフトウェア関連銘柄にとって過去最悪の1日」にも書きましたアトラシアン（TEAM）とトゥイリオ（TWLO）の決算発表です。
ソフトウェア開発およびプロジェクト管理ツールを製造するアトラシアンは、ソフトウェアの無料版を提供しています。しかし、同社によると、有料プランへの転換率が悪化しており、有料顧客のユーザー数が減少しているそうです。アトラシアンは株主宛ての書簡で、この2つの傾向は「企業がベルトを締め、雇用のペースを落とした結果です。言い換えれば、アトラシアンはより広範なマクロ経済の影響を免れないということです。」と述べています。
メッセージング、音声、ビデオを通じて企業が顧客とコミュニケーションするためのツールを販売するトゥイリオは、年間売上高成長率30％以上という目標を撤回しました。同社は株主宛ての書簡で、「多くのソフトウェア同業他社と同様に、マクロ環境が当社の事業に悪影響を及ぼしています。現在の市場において、30％以上の成長は達成できないと考えています。」と述べています。
多くのクラウドソフトウェア企業は1月決算であり、第3四半期は10月末に終了しました。これから届き始める第3四半期報告書では、先週発表されたような予想外の状況がさらに明らかになることは必至だと見られており、低迷する企業向けソフトウェア関連銘柄に新たなリスクをもたらすことになると予想されます。
一方で、予想以上の業績を発表したのが、消費者向けテクノロジー関連銘柄でした。オンライン小売業、旅行業、ギグエコノミー関連企業などが予想を上回る決算を発表し株価は比較的好調に推移しました。
手作りのユニークな商品を販売するエッツィ（ETSY）は先週発表した第3四半期決算で12%近い増収を記録し、予想を上回りました。イーベイ（EBAY）も同様に、予想を上回る売上を計上しています。ウェイフェア（W）は売上が9％減となりましたが、懸念されたほど悪くはなかったと発表しています。3銘柄とも決算発表後に株価は上昇しています。
2年以上ぶりの安値で取引されているアマゾンは、実は最新四半期にオンラインストアの売上を7％伸ばしています。ここにも消費者需要の強さが見て取れるのですが、投資家はその点をほとんど見落としています。
旅行業界ではエクスペディア（EXPE）とブッキング・ホールディングス（BKNG）が好決算を発表しました。エクスペディアは22％の売上増、ブッキングは29％の売上増となっています。
ブッキングのグレン・フォーゲルCEOはインタビューで、不況の可能性についての話題と、彼自身の旅行ビジネスで見ているものとの間に「ちょっとした断絶」があると述べています。ホスピタリティーや旅行業では、雇用が大きく伸びているそうで、「人々は旅行がしたいのです。多くの繰延需要があり、人々は再会を望んでいます。彼らは、2年以上のパンデミックによって、彼らが（旅行の機会を）逃したように感じています」と述べています。
フォーゲル氏は2023年の予測はまだしておらず、旅行への欲求が高まったときに、経済的な現実とぶつかる可能性があることを認めています。
ブッキング社は、レストラン予約サービス「OpenTable」も所有しており、そちらの傾向も良好とのことで、「人々は外に出たいと考えており、レストランの予約は増えています。」とフォーゲル氏は述べています。
フードデリバリーの需要も旺盛で、ドアダッシュ（DASH）は、前四半期の25％から33％の増収を発表しています。
不況であろうとなかろうと、人々は買い物や休暇、食事を続けていくわけで、退潮が伝えられるテクノロジー関連株でも消費者向け関連は比較的堅調な業績をあげていくものと期待されます。