ヒューマノイドロボット市場では、テスラ(TSLA)やエヌビディア(NVDA)など米国企業への期待が高まっています。しかし、AI技術が進歩するだけでは、ヒューマノイドを大量生産することはできません。
マーケットウォッチは10月2日、米国のヒューマノイド産業で「アクチュエーター」と呼ばれる重要部品の供給能力が大きな課題になっていると報じました。
米国はAIという「頭脳」で強みを持つ一方、ロボットを実際に動かす「身体」を構成する部品では、中国など海外の製造基盤に依存しています。ヒューマノイド市場の拡大を考えるうえで、半導体だけではなく部品サプライチェーンにも注目する必要があります。
ヒューマノイドの「筋肉」となるアクチュエーター
アクチュエーターは、電力などのエネルギーを物理的な動きに変換する装置です。
ヒューマノイドでは肩、肘、腰、膝など数多くの関節を動かすために使用され、1台に数十個搭載される場合があります。
マーケットウォッチによると、アクチュエーター関連部品はヒューマノイドの製造コストの最大60%を占める可能性があります。
モーター、ギア、センサーなどを組み合わせたアクチュエーターを、低価格で大量生産できるかどうかがヒューマノイド普及の重要な条件になります。
テスラでも簡単ではないサプライチェーン構築
テスラはヒューマノイド「オプティマス」の量産を目指しています。
しかし、イーロン・マスクCEOはオプティマスについて、既存のサプライチェーンが十分に整っておらず、テスラ自身が供給網を構築する必要があるとの認識を示しています。
資金力や製造能力を持つテスラでさえ、必要な部品をすべて容易に確保できるわけではありません。
現在、米国で大量生産されているアクチュエーターの多くは航空機や自動車向けです。ヒューマノイドにはサイズ、重量、精度など異なる性能が求められるため、そのまま転用できない部品もあります。
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アプトロニックは約80種類を独自設計
米国のヒューマノイド企業アプトロニックは、「Apollo」と呼ばれるロボットを開発しています。
同社は自社のロボット向けに約80種類のアクチュエーターを設計しており、この部品をヒューマノイドの中心的な技術として位置付けています。
一方、部品メーカーには難しい判断があります。
ヒューマノイド市場の成長期待は高いものの、どの設計や規格が主流になるのかはまだ固まっていません。大量生産が始まる前に巨額の設備投資を行うことにはリスクがあります。
その結果、ロボットメーカーが生産拡大を目指しても、部品メーカー側の供給能力が追いつかない可能性があります。
2031年には年間500,000台の市場へ
市場の成長予測は非常に大きなものになっています。
マーケットウォッチが紹介したバークレイズの予測では、世界で稼働するヒューマノイドは2025年末の約15,000台から、2026年末には約60,000台へ増える見通しです。
さらに2031年には、年間約500,000台が出荷される可能性があります。
モルガン・スタンレーは、ヒューマノイド関連市場が2050年までに5兆ドル規模に達する可能性を予測しています。
この成長が実現すれば、アクチュエーターだけではなく、モーター、精密ギア、ベアリング、センサーなど幅広い部品の需要が増えることになります。
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中国が持つ圧倒的な製造力
今回の記事で重要なポイントのひとつが、中国の製造能力です。
中国では電気自動車や産業用ロボットを支える巨大なサプライチェーンが形成されています。ヒューマノイドでも共通する部品が多く、既存の製造基盤を活用できます。
マーケットウォッチによると、2025年に世界で導入されたヒューマノイドの約85%を中国が占めました。
米国企業が海外から部品を調達する場合、納期が数週間に及ぶケースがあります。一方、中国の主要製造地域では数日単位で部品を確保できる場合があります。
AIの性能だけでは見えてこない「製造業としての強さ」が、中国企業の大きな競争力になっています。
米国のAI対中国の製造力
一方、米国はAI分野で大きな優位性を持っています。
ヒューマノイドには、周囲の環境を認識し、状況に応じて判断して動く「フィジカルAI」が必要です。この分野ではエヌビディアなど米国企業の技術力が重要な役割を果たします。
現在の競争は、「AIの米国」と「製造力の中国」という構図として見ることができます。
最終的には、高性能なAIを開発するだけでなく、それを搭載したロボットを低コストで数十万台、数百万台と生産できるかどうかが重要になります。
部品メーカーが次の投資テーマになる可能性
マーケットウォッチの記事では、米国の部品メーカーであるティムケン(TKR)の動きも紹介されています。
ティムケンはベアリングなどを手掛けており、ヒューマノイドメーカーとの取り組みを始めています。
これまでヒューマノイド投資では、テスラやエヌビディアなど完成品やAI半導体関連企業に注目が集まってきました。
しかし、本格的な量産段階に入れば、アクチュエーター、モーター、ギア、ベアリング、センサーなど、ロボットの「身体」を構成する企業にも成長機会が広がる可能性があります。
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AIデータセンターの拡大によって電力設備や冷却設備が新たな投資テーマになったように、ヒューマノイドでも周辺部品へ投資テーマが広がっていく可能性があります。
今回のマーケットウォッチの記事は、ヒューマノイド市場を見る際に、AIという「頭脳」だけでなく、アクチュエーターをはじめとする「身体」のサプライチェーンも重要であることを示しています。
情報ソース: MarketWatch: “The U.S. can’t find enough of this critical machine component to win the humanoid-robots race” (By William Gavin, Oct. 2, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。