AIデータセンター向けストレージ需要の拡大を追い風に株価を大きく伸ばしてきたHDD大手2社に、強い売り圧力がかかりました。
10月2日の米国市場では、午後1時過ぎの時点でウエスタンデジタル(WDC)とシーゲイト・テクノロジー・ホールディングス(STX)の株価が、ともに11%を超える下落となっています。
バロンズは10月2日付の記事で、両社の株価が急落した背景を紹介しています。
市場が警戒したのは、東芝がAIデータセンター向けHDDの生産能力を大幅に増強するとの報道です。
HDD業界ではこれまで、AI向け需要の急増に対して供給が追いつかず、需給の引き締まりがメーカーの価格決定力や利益を押し上げてきました。今回の東芝の増産計画は、その供給不足が将来緩和する可能性を市場に意識させた形です。
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東芝がAI向けHDDの生産能力を2倍へ
バロンズが紹介した日本経済新聞の報道によると、東芝は2027年度にAIデータセンター向けHDDの生産能力を現在の約2倍に引き上げる計画です。
フィリピンの生産拠点に約3億8,000万ドルを投資し、増産体制を整えるとされています。
さらに、現在約10%とされるHDD市場でのシェアを最大30%程度まで高める方針も報じられました。
両社はAIデータセンター向けストレージ需要の拡大による恩恵を受けてきただけに、競合企業の大規模な増産計画は将来の価格や利益率に影響する可能性があります。
市場では、東芝の供給力拡大によって、これまでウエスタンデジタルとシーゲイトを支えてきたHDDの供給不足が徐々に緩和するとの警戒が強まりました。
AIブームはGPUだけでなくHDDにも波及
生成AIの成長で注目されやすいのはGPUやHBMですが、AIデータセンターでは大量のデータを保存するストレージも不可欠です。
AIモデルの学習や推論では膨大なデータを扱うため、大容量のHDD需要も拡大しています。
こうした環境を背景に、ウエスタンデジタルとシーゲイトは2025年半ば以降、S&P500の中でも特に株価上昇が目立つ銘柄となっていました。
投資家はAI向けストレージ需要が今後も強く、HDDの供給不足が続くとの期待を株価に織り込んできました。
そのため、今回の東芝の増産計画は「供給不足が長く続く」という前提を揺さぶる材料となっています。
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東芝の増産ですぐ供給過剰になるとは限らない
ただし、東芝が増産に動くからといって、HDD市場が直ちに供給過剰へ転じるわけではありません。
現在のHDD市場では、ウエスタンデジタルとシーゲイトが大きなシェアを持っています。
バロンズによると、両社の2027年度の設備投資額は合計約17億ドルになると予想されています。
一方、報じられている東芝の投資額は約3億8,000万ドルです。
もちろん3億8,000万ドルは小さな投資ではありません。しかし、これだけで市場シェアを約10%から最大30%まで短期間に引き上げられるかについては、不透明感が残ります。
HDDは工場の生産能力を増やせばすぐに販売を拡大できる製品ではありません。量産体制を整えるだけでなく、顧客による製品認証や長期的な供給体制の構築も必要になります。
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長期契約が急激な価格下落を抑える可能性
もう1つ重要なのが、HDDメーカーと顧客との長期契約です。
ウエスタンデジタルとシーゲイトは、顧客との長期契約を増やしています。
これはマイクロン・テクノロジー(MU)などメモリー半導体メーカーでも進んでいる動きで、販売価格や供給量を長期間にわたってある程度固定することで、業績の安定につなげる狙いがあります。
仮に東芝が計画通り生産能力を増強しても、その供給が市場価格にすぐ影響するとは限りません。
バロンズが紹介したアナリストの見方では、東芝による供給増が顧客との価格交渉などに本格的な影響を与えるのは2028年以降になる可能性もあるとされています。
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AI関連株は需要だけでなく供給を見る必要がある
今回のウエスタンデジタルとシーゲイトの急落は、AI関連株を見るうえで重要な示唆があります。
AI市場が成長しているからといって、関連企業の利益が一直線に増え続けるとは限りません。
需要が供給を上回る局面では、メーカーは価格を引き上げやすくなり、利益率も改善します。しかし、高い収益性を見た競合企業が設備投資を増やせば、徐々に供給が需要へ追いついていきます。
その結果、価格上昇が止まり、利益率が低下する可能性があります。
これはHDDだけの問題ではありません。HBMを含むメモリー半導体やAI半導体でも、「需要がどれだけ増えるか」と同時に「供給がどれだけ増えるか」を確認する必要があります。
今回の急落が買い場になるかは今後の需給次第
東芝の増産計画は、ウエスタンデジタルとシーゲイトにとって無視できない材料です。
一方で、AIデータセンター向けストレージ需要そのものが引き続き高い成長を続ければ、供給能力が増えても需給が大きく悪化しない可能性があります。
重要なのは、東芝が計画通り増産できるかだけではありません。
今後はAIデータセンター向けHDD需要の成長率、各社の設備投資、販売価格、長期契約の条件などを総合的に確認する必要があります。
今回の株価急落は、AI関連株では需要の強さだけでなく、「供給不足がいつまで続くのか」が企業の利益と株価を大きく左右することを改めて示しています。
情報ソース
情報ソース: Barron’s: “Seagate Stock and Western Digital Tumble as Investors Worry AI Shortage Will Ease” (By Nate Wolf, Oct. 2, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。