AI市場の拡大によって、半導体業界ではメモリ需要への注目が一段と高まっています。特にAIサーバー向けの高性能メモリを中心に需給が逼迫する一方、関連銘柄の株価は必ずしも一直線に上昇しているわけではありません。
その代表例の1つが、米メモリ大手のマイクロン・テクノロジー(MU)です。
米投資情報誌『Barron’s(バロンズ)』が2026年8月11日に報じたデータを見ると、マイクロンはメモリ市場の強い需給環境を追い風に業績拡大が期待される一方、株式市場では将来の景気循環悪化を警戒するような低いバリュエーションで評価されています。
今回は、バロンズが報じた事実情報をもとに、マイクロンの株価が置かれている状況と、市場がなぜ「メモリ好況の終わり」を警戒しているのかを考えていきます。
マイクロン株は最高値から大きく調整
まず確認したいのが、マイクロン株の直近の値動きです。
同社株は2026年6月下旬に1,200ドルを超える水準まで上昇しました。しかし、その後は利益確定売りなどに押され、直近1カ月では約11%下落しています。
2026年8月11日の米国市場では、下落していましたが、引けにかけて持ち直し前日比0.87%高となる868.52ドルで 取引を終えています。
6月下旬の高値と比較すると、大きな調整局面に入っていることが分かります。
ただし、半導体株、とりわけメモリ企業の株価は、現在の業績だけでなく、市場が将来の需給サイクルをどのように予想しているかによって大きく変動します。
重要なのは、今回の株価下落が業績悪化を先取りしたものなのか、それとも急騰後の一時的な調整なのかという点です。
予想PERは6倍未満まで低下
株価調整によって、マイクロンのバリュエーションはかなり低い水準まで下がっています。
ファクトセット(FDS)のデータによると、現在の主な投資指標は以下の通りです。
・予想PER:6倍未満
・予想PBR:3.4倍
特に注目したいのが、予想PERが6倍を下回っている点です。
一般的に、企業のPERが極端に低下する場合、市場が現在の高い利益水準は長く続かず、近い将来に利益が大きく減少すると予想している可能性があります。
メモリ半導体市場は過去にも「不足→価格上昇→増産→供給過剰→価格下落」というサイクルを繰り返してきました。
現在の低いPERは、市場が今回のメモリ好況についても、いずれピークを迎え、利益が減少すると警戒していることの表れとも考えられます。
メモリ価格上昇とPER6倍未満のギャップ
一方で、現在のメモリ市場では製品価格の上昇傾向が続いています。
ここに、現在のマイクロン株を考える上で重要なポイントがあります。
メモリ価格が上昇し、企業の収益環境が改善しているにもかかわらず、マイクロン株は予想PER6倍未満という低い評価にとどまっています。
つまり市場は、「今の好業績」よりも「その後に訪れる可能性のある業績悪化」を強く意識していると考えられます。
逆に言えば、メモリ価格の上昇が市場予想以上に長期化し、マイクロンが高い利益率を維持できれば、市場の想定そのものが修正される可能性があります。
その場合、利益成長に加えてPERなどのバリュエーションが上昇することで、株価が押し上げられる展開も考えられます。
アップルが中国メモリ企業からの調達を模索
現在のメモリ需給の逼迫を象徴する動きも報じられています。
バロンズによると、アップル(AAPL)はメモリ不足への対応として、中国の大手メモリメーカーである中国の長鑫存儲技術(CXMT)から製品を調達できるよう、許可を求めるロビー活動を行ったとされています。
アップルのような世界最大級の電子機器メーカーが新たな調達先を模索していることは、メモリ供給がそれだけ逼迫していることを示す材料です。
中国メーカーの成長は、中長期的にはマイクロンにとって競争激化につながるリスクがあります。
しかし短期的には、既存メーカーだけでは需要を十分に満たせないほど市場全体の供給が不足しているとも解釈できます。
需要に対して供給が追いついていない状況が続けば、マイクロンを含む大手メモリメーカーの価格決定力を支える要因になります。
米国みずほ証券は目標株価1,375ドルを維持
アナリストの評価も強気です。
米国みずほ証券のアナリストであるビジェイ・ラケッシュ氏は、2026年8月第2週にマイクロンの経営陣と面会した後も、投資判断「アウトパフォーム」を維持しました。
目標株価は1,375ドルです。
また、2027年予想ベースではPBR5.3倍程度まで評価される可能性があるとしています。
現在のPBR3.4倍と比較すると、大きな差があります。
今後マイクロンの利益成長が継続し、市場が現在のメモリサイクルの持続性に自信を持つようになれば、この評価差が縮小する可能性があります。
一方、市場が懸念しているようにメモリ価格が早期にピークを迎えれば、現在の低いバリュエーションにも一定の合理性があることになります。
カギを握るのはメモリ価格と粗利益率
今後のマイクロンを判断する上で、特に確認したいポイントは2つあります。
1つ目は、メモリ価格の上昇がどこまで続くかです。
現在の予想PER6倍未満という低い評価が修正されるためには、メモリ価格上昇が短期的な供給不足によるものではなく、AI需要などを背景とした構造的な成長であることを市場が確認する必要があります。
2つ目は、粗利益率(グロスマージン)です。
メモリ価格の上昇によって高い粗利益率を維持できれば、マイクロンの利益水準は市場予想以上に高止まりする可能性があります。
その場合、現在PBR3.4倍で評価されている株価が、米国みずほが想定する5.3倍に近づいていく可能性も出てきます。
市場が恐れる「メモリ好況の終わり」は来るのか
マイクロン株は6月下旬の1,200ドル超から大きく下落し、足元では約869ドルまで調整しています。
一方、実際のメモリ市場では供給不足が続き、製品価格も上昇しています。
つまり現在のマイクロンには、「強い事業環境」と「低い株式市場の評価」という一見矛盾した状況が存在しています。
予想PER6倍未満という数字は、市場が現在の好業績をそのまま評価していないことを示しています。投資家が恐れているのは今の業績ではなく、「メモリ好況がいつ終わるのか」です。
今後の決算でメモリ価格の上昇、高い粗利益率、AI向け需要の拡大が継続して確認されれば、市場が想定しているメモリサイクルのピークが後ろ倒しになる可能性があります。
そうなれば、マイクロン株は業績成長だけでなく、低すぎるバリュエーションの修正というもう1つの上昇要因を得ることになります。
反対に、供給拡大によってメモリ価格が早期にピークアウトすれば、現在の低PERは市場の慎重な見方を正しく反映していたことになります。
マイクロン株を見る上では、株価そのものよりも、「メモリ価格」「粗利益率」「バリュエーション」の3つが今後どの方向に動くのかを確認することが重要です。
情報ソース: Barron’s: “ How Micron Stock Can Bust Out of Its Slump” (By Adam Clark, Aug. 11, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら マイクロン・テクノロジー MU
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