ラックスペース株が500%急騰、AMD提携で始まるAIクラウド復活劇

  • 2026年6月17日
  • 2026年6月17日
  • BS余話

2026年の米国株市場で、ひそかに大きな注目を集めているクラウド企業があります。それが、ラックスペース・テクノロジー(RXT)です。

同社の株価は2026年に入り500%以上も急騰しています。2026年1月には1ドル未満のペニーストックに沈んでいたことを考えると、まさに劇的な復活劇です。

その背景にあるのは、単なるクラウド企業から「マネージドAIプロバイダー」へと生まれ変わろうとする大胆な事業転換です。特に、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)との大型提携は、同社の将来性を考えるうえで極めて重要な材料です。

本記事では、ラックスペースが狙うエンタープライズAI市場での立ち位置と、今後の成長シナリオについて考察します。

「AIを丸投げできる」企業向けサービスへの転換

ラックスペースの戦略で最も注目すべき点は、企業がAIを導入する際の大きな負担を引き受けようとしていることです。

多くの企業にとって、AI導入の課題は単にGPUを確保することだけではありません。セキュリティ、コンプライアンス、運用管理、説明責任など、実際にビジネスでAIを使うためには多くの専門知識が必要です。

ラックスペースは、ここに商機を見出しています。

同社はAMDと提携し、2028年までに30メガワット規模のAIクラウドを構築する計画です。このAIクラウドには、AMD Instinct GPUとEPYC CPUが採用される予定です。

さらに、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)とも提携し、エンタープライズ向けAIプラットフォームの導入や管理を支援しています。

つまり、ラックスペースは、ハードウェア、ソフトウェア、日々の運用、セキュリティまでをまとめて請け負う「AIの実行部隊」になろうとしているのです。

企業側から見れば、自社で高度なAI人材を大量に抱えなくても、最新のAI基盤を安全に利用できる可能性があります。これは、単なるクラウドの場所貸しとはまったく異なるビジネスモデルです。

15%の人員削減が示す本気の事業再構築

一方で、ラックスペースの復活シナリオは、決して楽観的な材料だけで構成されているわけではありません。

同社は世界の全従業員の15%を削減する計画を発表しています。直近の決算では売上高が市場予想を上回った一方、1株当たり損失は予想よりも拡大しました。

通常、人員削減はネガティブに受け止められがちです。しかし、今回のリストラは単なる縮小ではなく、事業構造を大きく変えるための「攻めの再編」と見ることもできます。

2020年のIPO当時、ラックスペースはマルチクラウド関連サービスを幅広く提供する企業として上場しました。しかし、その後の業績や株価推移を見る限り、従来型のクラウドサービスだけでは十分な成長ストーリーを描けませんでした。

そこで同社は、旧来型の事業コストを削減し、AI関連サービスへ経営資源を集中させようとしています。

30メガワット規模のAIクラウド構築には、多額の先行投資が必要です。そのため、低成長・低採算の領域を整理し、より高い収益性が期待できるマネージドAIサービスへ軸足を移す判断は、経営陣の強い危機感と本気度を示していると考えられます。

AMDとの提携がもたらす大きな意味

ラックスペースの戦略を支える重要な存在が、アドバンスト・マイクロ・デバイセズです。

AIクラウド事業では、高性能GPUを安定的に確保できるかどうかが競争力を大きく左右します。ラックスペースがAMDを主要ハードウェアプロバイダーとして選んだことは、今後のAIインフラ展開において大きな意味を持ちます。

AMDにとっても、ラックスペースとの提携は重要です。AIチップ市場ではエヌビディア(NVDA)が圧倒的な存在感を持っていますが、AMDはInstinct GPUとEPYC CPUを軸にシェア拡大を狙っています。

ラックスペースのAIクラウドが成長すれば、AMD製品の採用拡大にもつながります。両社は、エンタープライズAI市場を開拓するうえで、互いに補完し合う関係にあるといえます。

さらにAMDは、メモリ価格上昇への対策としてメモリ最適化企業「MEXT」の買収も発表しています。AI処理では大量のメモリが必要になるため、ハードウェア側のコスト効率改善は、将来的にラックスペースのサービス競争力にも影響する可能性があります。

大化け期待とリスクが同居する銘柄

ラックスペースは、レガシーなクラウド企業から、エンタープライズAIを支えるマネージドサービス企業へと大きく変わろうとしています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズやパランティア・テクノロジーズといった有力企業と提携している点は、同社の新戦略が一定の評価を受け始めていることを示しています。

一方で、株価はすでに2026年に入って大きく上昇しており、期待先行の面も否定できません。人員削減や赤字拡大が示すように、事業転換の途中には大きなリスクもあります。

今後の焦点は、30メガワット規模のAIクラウド計画が予定通り進むか、そしてマネージドAIサービスが実際に収益化できるかです。

このシナリオが成功すれば、ラックスペースは単なるクラウド企業ではなく、企業向けAI導入を支える中核プレイヤーへと進化する可能性があります。

大化けの可能性を秘める一方で、失敗すれば株価の反動も大きくなりやすい銘柄です。ラックスペースは、まさにハイリスク・ハイリターンのAI関連株として、今後も注目すべき存在です。

情報ソース: Barron’s: “ Why This AI Data Center Stock Is Surging on an AMD Partnership” (By Mackenzie Tatananni, June 16, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*関連記事「AMDは次の1兆ドル企業になれるか?MEXT買収が示す成長シナリオ

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