前回の記事「サンディスク決算発表で見えたAIストレージ需要の爆発 好決算でも株価が下げた理由」では、サンディスク(SNDK)の第3四半期決算について取り上げました。
決算発表直後の時間外取引では株価が下落していたものの、翌5月1日の米国市場では一転して買いが集まり、終値は+8.34%の1188ドルと大幅高になりました。市場の受け止め方が短時間で大きく変わった背景には、サンディスクが単なるメモリ関連企業ではなく、AIインフラ拡大の直接的な受益企業として再評価され始めたことがあります。
かつてのサンディスクは、景気循環やメモリ市況に左右されやすいコモディティ企業と見られていました。しかし、今回の決算とその後の株価反応は、同社がAIゴールドラッシュにおける「道具売り」としての地位を強めている可能性を示しています。
本記事では、サンディスクの将来性を3つの視点から整理します。
ソフトウェア企業並みの高収益体質へ変わりつつある
今回の決算で最も注目すべき点は、サンディスクの粗利益率です。
同社の調整後粗利益率は78%に達し、次期には80%が見込まれています。これは通常のハードウェア製造業としては非常に高い水準です。メモリやストレージ関連企業は、一般的に市況の影響を受けやすく、価格競争に巻き込まれやすい業種と見られてきました。
しかし、80%近い粗利益率が視野に入っているということは、サンディスクが単なる部品供給会社から、高付加価値なAIインフラ企業へと性格を変えつつあることを示しています。
その背景にあるのが、AIサーバー向け高速ストレージ需要の急拡大です。AIの学習や推論では、GPUだけでなく、膨大なデータを高速に保存し、読み書きするためのストレージが欠かせません。データ量が増え続けるほど、ストレージの重要性は高まります。
需要が供給を大きく上回る環境では、サンディスクのような有力企業は価格決定力を持ちやすくなります。今回の高い利益率は、一時的な特需だけではなく、同社の収益構造がより高収益型へ移行している可能性を示すものです。
ビッグテックのAI投資がサンディスクの成長を押し上げる
サンディスクにとって、もう一つの大きな追い風がビッグテックによるAIデータセンター投資です。
アマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)といった巨大テクノロジー企業は、AIインフラ整備に巨額の資金を投じています。これらの企業によるAIデータセンター関連投資が今年だけで7000億ドルを超えるとされる中、サンディスクはその支出の直接的な受益企業になりつつあります。
特に注目されるのは、同社のデータセンター向け売上高が前年同期比で645%増となった点です。これは単なる好決算というより、AIデータセンター向け需要がサンディスクの成長ドライバーとして急速に立ち上がっていることを意味します。
AIブームでは、どうしてもエヌビディア(NVDA)のGPUに注目が集まりがちです。しかし、GPUだけではAIインフラは完成しません。大量のデータを保存し、高速で処理するためのストレージがなければ、AIシステム全体の効率は落ちます。
メタやマイクロソフトが、部品価格の上昇が設備投資を押し上げていると述べていることも重要です。これは裏を返せば、価格が上がっても必要な部品を確保しなければならないほど、AIインフラ投資が急務になっているということです。
この環境では、サンディスクのように重要部品を供給できる企業の交渉力が高まります。
エヌビディアとの関係と供給制約が参入障壁になる
サンディスクの将来性を考えるうえで、最も重要な要素の一つがエヌビディアとの関係です。
エヌビディアが自社のAIサーバーに新たなストレージ技術を組み込み、ジェンスン・フアンCEOがその市場について大きな可能性を示したことは、サンディスクにとって非常に大きな意味を持ちます。これは、同社の製品がAIエコシステムの中核的な部品として認識され始めていることを示しているためです。
AIインフラでは、一度標準的な構成に組み込まれた部品や技術は、簡単には置き換えられません。性能、信頼性、供給能力、顧客との関係性が重要になるためです。この点で、サンディスクは単なるメモリ企業ではなく、AIサーバー設計の一部に入り込む企業へと進化している可能性があります。
一方で、供給制約も重要なポイントです。新たな生産能力の稼働は2027年中盤まで見込めないとされています。短期的には供給不足によって売上拡大の上限が意識される可能性がありますが、投資家の視点では別の見方もできます。
供給が限られているということは、価格が高止まりしやすく、競合がすぐに追随しにくい環境が続くということでもあります。さらに、同社が新たに締結した5つの複数年契約は、将来の売上の見通しを高める材料になります。
メモリ業界は従来、需要と供給のバランスが崩れるたびに業績が大きく変動してきました。しかし、長期契約が増えれば、そうした市況変動の影響をある程度和らげることができます。これはサンディスクの評価を見直すうえで重要な変化です。
サンディスク株はまだ成長を織り込みきっていないのか
今回、一部のアナリストはサンディスクの目標株価を現在の約2倍にあたる2000ドルに設定しています。株価がすでに1188ドルまで急騰した後でも、なお上昇余地があると見る背景には、AIインフラ企業としての価値がまだ十分に織り込まれていないとの判断があります。
また、2028年の1株当たり利益予想が従来の2倍以上に引き上げられていることも、同社への期待の大きさを示しています。市場はサンディスクを、単なる半導体関連株やメモリ市況銘柄としてではなく、AIデータセンター拡大の中心的な受益企業として見始めています。
もちろん、リスクもあります。メモリ価格の変動、設備投資サイクルの減速、ビッグテックの投資姿勢の変化、競合企業の供給拡大などには注意が必要です。株価が急騰した後だけに、短期的な調整が起きる可能性もあります。
それでも、AIの普及に伴ってデータ量が増え続けるという大きな流れは変わりにくいと考えられます。AIが使われるほど、データを保存し、高速に処理する場所が必要になります。その基盤を支える企業として、サンディスクの存在感は今後さらに高まる可能性があります。
サンディスクは今、従来型のメモリ企業から、AIインフラ時代の重要プレーヤーへと変わる転換点に立っています。今回の株価上昇は、その再評価の始まりにすぎないのかもしれません。
情報ソース: Barron’s: “Sandisk Earnings Were Excellent. Why This Analyst Says the Stock Could Double.” (By Adam Levine and Nate Wolf, May 01, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
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