2025年12月8日、米半導体大手マーベル・テクノロジー(MRVL)の株価は7%下落し、92ドルで取引を終えました。これは8月29日以来、最大の一日の下落幅です。
先週、同社がデータセンター部門の好調な見通しを発表し、株価が11%上昇したばかりのタイミングでの急落でした。この激しいボラティリティの背景には、ウォール街のアナリスト間でも意見が真っ二つに割れるある契約の行方があります。
本記事では、バロンズの報道に基づき、現在マーベル・テクノロジーが直面している不確実性と将来性について分析します。
アマゾン「Trainium」を巡る情報の錯綜
最大の焦点は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のクラウドサービス部門(AWS)における次世代AIプロセッサ「Trainium 3」および「4」の設計契約です。この受注状況について、大手証券会社2社の見解が完全に矛盾しており、これが投資家の疑心暗鬼を招いています。
ベンチマーク・エクイティ・リサーチの主張は弱気です。同社はシリコンバレーでの業界会合からの情報として、マーベル・テクノロジーはアマゾンの次世代チップの設計を、台湾の競合アルチップ・テクノロジーズ(3661)に奪われたと確信しています。これにより投資判断を「ホールド」に引き下げました。
一方で、J.P.モルガンの主張は強気です。マーベル・テクノロジー自身の強気なガイダンスを根拠に、同社が「Trainium 4」プログラムを獲得したと結論付け、目標株価を130ドルに引き上げました。
通常、アナリストの意見の相違は目標株価や市場環境の解釈で起こるものですが、今回は契約を取れたか、取れていないかという客観的事実そのものについて認識が対立しています。 もしベンチマーク・エクイティ・リサーチの指摘通り、次世代機の契約をアルチップ・テクノロジーズに奪われているのであれば、現在のマーベル・テクノロジーの収益は既存プログラムの数量増による一時的なものに過ぎない可能性があります。将来の成長ドライバーを失っているとすれば、株価の調整は避けられないと考えられます。
マイクロソフトとの関係にもくすぶる火種
マーベル・テクノロジーにとっての懸念材料はアマゾンだけではありません。別の主要顧客であるマイクロソフト(MSFT)との関係においても、競合の影がちらついています。
報道によると、カスタムAIチップ大手のブロードコム(AVGO)が、マイクロソフトへのチップ提供について協議中であるとされています。現在、マイクロソフトに対してチップ設計を提供しているのはマーベル・テクノロジーです。
マーベル・テクノロジーの成長シナリオは、ハイパースケーラーからの長期的な受注に依存しています。 もしアマゾンでの失注が事実であり、かつマイクロソフトのビジネスの一部でもブロードコムに奪われるような事態になれば、マーベル・テクノロジーの競争優位性が根本から揺らぐことになります。特定の顧客への依存度が高いビジネスモデルにおいて、競合他社の台頭は、数値上の業績以上に深刻なリスク要因となり得ます。
会社側の沈黙と市場の反応
現状、この混乱に対してマーベル・テクノロジー側はコメントを出していません。 会社側は先週、今後2年間のデータセンター部門の成長が予想を上回るというガイダンスを出していますが、ベンチマーク・エクイティ・リサーチのアナリストはこの数字について、新しい契約ではなく既存プログラムの継続的なボリュームによるものと分析しており、会社側の楽観的な見通しをミスリードであると断じています。
投資家にとって最も難しいのは、会社側の公式発表と、アナリストの現地調査情報のどちらを信じるかという点です。 12月8日の市場反応を見る限り、市場はひとまず火のない所に煙は立たないとして、リスク指摘を重く受け止めた形です。
結論:事実確認が取れるまでは「視界不良」
マーベル・テクノロジーの将来性は、以下の2点が事実であるかどうかにかかっています。
- アマゾンの次世代チップ契約を本当に失ったのか?
- マイクロソフトとの独占的な関係を維持できるか?
J.P.モルガンのように強気な見方を維持する根拠もある一方で、アルチップ・テクノロジーズへの失注が事実であれば、中長期的な成長ストーリーは修正を余儀なくされます。 会社側からの明確な否定や、確定的な契約情報の開示がない限り、同社株は不安定な値動きが続く可能性が高いと言えます。
情報ソース: Barron’s: “Marvell Stock Is the Biggest Loser From Amazon’s New Chip. This Downgrade Proves It.” (By Nate Wolf, Dec. 8, 2025)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事はこちら マーベル・テクノロジー MRVL
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