インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)の株価が、四半期の一株当たり利益が市場予想を上回ったことを受けて、1月29日の時間外取引で大幅に上昇しました。同社のアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は、トランプ政権が再び誕生したことによる競争環境の変化や、AI技術の発展が今後の成長に寄与すると考えていると述べました。
IBMの最新決算発表―予想を上回る利益
IBMの2024年第4四半期決算では、調整後の一株当たり利益が3.92ドルとなり、市場予想の3.78ドルを上回りました。売上は175億5,000万ドルと前年同期比で1%増加しましたが、ウォール街の予想である175億6,000万ドルには若干届きませんでした。
特に、ソフトウェア部門の売上が10%増加したことが好材料となりました。一方で、クラウドサーバーやストレージ関連を扱うインフラ部門の売上は減少しました。さらに、クラウドコンピューティングやAIに関連した顧客プロジェクトへの移行を進めているコンサルティング事業の売上も落ち込みました。
それでも、IBMの経営陣は、企業が業務にAIを取り入れようとする動きが同社にとって追い風になっていると説明しました。クリシュナCEOは「レッドハットのさらなる加速により、ソフトウェア部門は2桁の売上成長を記録した」と述べ、AI関連事業の拡大が進んでいることを強調しました。
トランプ政権の再登場とIBMの買収戦略
クリシュナCEOは、トランプ政権の誕生により、「もう少し競争が促進される環境になる」との見解を示しました。そして、適切な買収ターゲットが見つかれば積極的に動く姿勢を明らかにしました。
現在、IBMはクラウド管理ソフトウェアを手掛けるハシコープ(HCP)を64億ドルで買収する計画を進めています。この買収は英国の規制当局の監視下に置かれており、承認が得られればIBMのクラウドおよびAI事業のさらなる強化につながると期待されています。
クリシュナCEOは「妥当な取引は妥当な時間で成立する可能性が高く、何年も待たされることはない」と述べ、ビジネス環境の変化がIBMの戦略にとって好材料になると考えていることを示唆しました。
ディープシークのAI技術とIBMの対応
IBMはAI分野での競争力を高めるため、大規模な言語モデルをエンタープライズ向けに最適化する取り組みを進めています。クリシュナCEOは「より小さなモデルと、より合理的な学習時間が不可欠である」と述べ、IBMがこの分野で1年以上にわたって技術開発を進めてきたことを強調しました。
中国企業ディープシークが開発した低コストAI技術が注目を集めていますが、IBMはAIの推論コストを30倍削減できる可能性を指摘しました。この技術の進展により、AIの導入コストが下がり、多くの企業がAIを活用しやすくなると考えられます。
IBMのAIビジネスの成長と市場評価
IBMのAI事業は順調に成長しており、生成AIのビジネスが50億ドル以上の規模に達しました。前四半期比で20億ドルの増加を記録しており、企業のAI導入が進んでいることを示しています。
また、AIコンサルティング事業も拡大しており、IBMはAIを活用したデジタルトランスフォーメーションのパートナーとしての地位を確立しつつあります。BofAのアナリストは「IBMにとってAIはコンサルティング事業の成長機会であり、企業がAI戦略を進める上で重要なパートナーとなる」と評価しています。
エヌビディアとIBMの株価動向
AI市場の成長に伴い、多くのハイテク企業の株価が変動していますが、IBMの株価は他の大手AI企業と比較して安定して推移しています。エヌビディア(NVDA)などのチップメーカーは市場の変動の影響を大きく受けていますが、IBMはハイブリッドクラウドやAIコンサルティングといった事業に重点を置いており、安定した成長が期待されています。
IBMの株価は決算発表後、時間外取引で約9%急騰しました。過去1年で24.5%の上昇を記録しており、AI技術の進展や買収戦略が市場に好意的に受け止められていることがわかります。
まとめ
IBMはAI技術の進化と買収戦略を推進し、企業向けソリューションの提供を強化しています。トランプ政権の再登場がビジネス環境にプラスに働く可能性や、ディープシークのAI技術が業界に大きな影響を与えることが期待されています。
また、IBMのAI事業は成長を続けており、生成AIのビジネス規模は拡大しています。今後、IBMがAIコンサルティング市場での存在感を高めることができるかが注目されます。
投資家にとっては、IBMの安定した事業基盤と成長戦略が魅力的な要素となっており、AI市場の拡大とともに、さらなる株価上昇の可能性も見込まれています。
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