IBMのスピンオフ企業キンドリルが苦戦

IBM

先週IBMからスピンオフしたキンドリル・ホールディングス(KD)は、公開企業としては不安定なスタートを切っています。

キンドリルは、ITマネージドサービス事業の大手で、4,000社以上の顧客のためにデータセンターなどのIT運用を行っています。キンドリルは9万人の従業員を抱え、この分野を支配しています。

スピンに関連してキンドリルが作成したプレゼンテーションによると、2020年の売上高はプロフォーマ・ベースで191億ドルで、ライバルであるDXC テクノロジー(DXC)の約2倍の規模であり、Atos(フランス)、HCLテクノロジーズ(インド)、タタ・コンサルタンシー・サービシイズ(インド)、コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ(CTSH)などのライバル企業に比べてより大きな優位性を持っています。

キンドリル社のCEOであるMartin Schroeter氏は先週、同社を「190億ドルの新興企業」と捉え、ますます多くのITワークロードが従来のデータセンターからクラウドに移行している世界で、より適切なビジネスを行うために事業を再構築していると語りました。

このスピンオフにより、M&Aや社内開発を活用して環境の変化に合わせて事業構成を調整し、成長に向けた再配置を行うことができるというのが同氏の見解です。また、IBMから分離したことで、ソフトウェアやコンサルティングでIBMと競合していた企業との提携が可能になったと同氏は主張しています。

しかし、キンドリルの株価は、11月4日に28.41ドルで取引が開始された後、連日下落しています。11月10日の朝には19.26ドルと、先週の取引開始時に比べて32%の下落となりましたが、その後、20ドルの大台に戻しました。この日は2%上昇し、21.24ドルで取引を終えています。

投資家がキンドリルを敬遠するのには理由があります。

IBMが投資家にとって魅力的なのは、5.3%の配当利回りです。これはダウ・ジョーンズ工業平均銘柄の中では最も豊かな配当であり、S&P500銘柄の中でも最高水準の利回りです。

IBMは、スピンオフを完了する前に、2社の配当金を合わせればスピンオフ前のIBMと同じになると言っていました。その通りですが、利回りのすべてがIBMから来ていることがわかりました。

キンドリルは、配当や自社株買いを行わず、余剰資金を会社の成長を取り戻すための投資に充てるつもりです。そのため、利回りを求めてIBMを所有している人は、キンドリルの株を持ち続けることはないと思われます。

もう1つの問題は、キンドリルが2025年までに成長を期待できないことです。同社は、2021年の売上高を185億ドルから187億ドルと予想しており、中間値では2020年の水準から2.6%減少した数字となっています。

調整後のEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前の利益)は28億ドルから29億ドル、税引き前の営業利益は1億ドルから2億ドルと見ています。

IBMは、スピンオフ後もキンドリルの株式を19.9%保有していますが、今後1年以内のいずれかの時点で、この株式を未払いの債務と交換することを約束しています。少なくとも理論上は、この株式がいずれ公開市場に売却され、株式のオーバーハングが生じる可能性があります。

例えば、DXCが2022年3月期の予想売上の約0.5倍であるのに対し、キンドリルは2021年の予想売上の0.24倍で取引されており、ほとんどの指標でDXCや他のライバル企業よりも割安に見えます。

しかし、投資家にとっては、配当利回りのない縮小傾向のITサービス企業を所有する動機はほとんどありません。株式市場から見えないところで会社を再建できるような、底値を狙う非公開企業の買い手が現れない限り、キンドリルの株式には目先の明らかなカタリストはほとんどないと思われます。

*過去記事はこちら「IBM

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