米国のIT大手、インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)の株価が、四半期決算発表の翌日である4月24日の米国市場で6.6%下落し、ダウ工業株30種平均構成銘柄の中で最大の下げ幅となりました。しかし、それにもかかわらず、一部のアナリストは過度に悲観する必要はないと指摘しています。
第1四半期は「いつもどおり」だった
メリウス・リサーチのアナリストは、「深呼吸を。これはただの第1四半期に過ぎない」とリサーチノートで述べています。さらに、「第1四半期は例年IBMにとって最も弱い時期であり、今回はその中でも予想を上回る結果だった」と分析しています。
株価下落の要因は?
株価の下落は、IBMのオープンソースソフトウェア部門であるレッドハットの売上成長鈍化が一因と見られています。この部門はIBMの売上の10%以上を占めており、同時にコンサルティング部門の需要減少も影響していると指摘されています。
しかしながら、レッドハットの「ブッキング(契約高)」は売上を上回る水準で推移しており、今後の需要の強さを示しています。また、政府の支出抑制を目指すDOGE(Department of Government Efficiency)の動きにもIBMは他社に比べて影響を受けにくいと評価されています。
今後に向けた成長材料も明確
メリウス・リサーチは、「IBMは現在、大型メインフレームの更新サイクルに入っており、ソフトウェア部門は今後加速が見込まれる。レッドハットの改善がそれを後押しする」とコメントしています。さらに、コンサルティングの売上は横ばいとの見通しを示しており、妥当な水準と見なされています。
4月には、IBMは「AI時代のために設計された」と謳う新メインフレーム「z17」を発表しました。
不透明感の中でも堅調な見通し
決算発表では、CEOのアービンド・クリシュナ氏が「短期的な不確実性が顧客の意思決定を鈍らせる可能性がある」と警告した一方で、顧客の購買行動にはまだ変化は見られないと述べました。また、世界的な貿易摩擦の影響が懸念される中でも、IBMは通年のキャッシュフローと売上の見通しを維持しています。
債券市場でも注目集まる
BondCliQによると、IBMの債券市場では、午前中に売りが見られた後、午後には買いが入るなど、売買が交錯する展開となりました。IBMは数多くの社債を発行しており、BNPパリバ、バークレイズ、ドイツ銀行、RBCキャピタルマーケッツなどが主幹事を務めています。
GimmeCreditのアナリスト、デイブ・ノヴォセル氏は「IBMは第1四半期にクラウドソフトウェア企業HashiCorpの買収資金として70億ドルの債務を追加した」と述べています。この結果、コアレバレッジは3.5倍に上昇しましたが、年内のフリーキャッシュフローが70億ドルを超える見込みであり、年内に負債削減が進むと見られています。
株価のパフォーマンスは?
2025年に入ってからのIBM株のパフォーマンスは+4.3%と堅調で、同期間のS&P500指数が7%下落しているのとは対照的です。
まとめ:今は「買いの好機」か?
今回の株価下落は一時的な要因によるものとの見方が広がっています。大型メインフレームの導入やレッドハットの改善、そして財務基盤の安定性を背景に、現在の株価は「買いの好機」と見る向きもあります。中長期での成長を見据えた投資家にとって、IBMは依然として注目すべき銘柄です。
*過去記事はこちら IBM