投資家が注意すべきビットコインの2つの問題

2月22日の日本経済新聞電子版に2021年2月14日付英フィナンシャル・タイムズ電子版の転載記事「[FT]テスラ、暗号資産投資の愚行」が掲載されました。

要旨としては、ESG(環境・社会・ガバナンス)格付けで「シングルA」を取得しているテスラのような会社が、以下のように環境に悪影響を与えるビットコインに投資するのは愚行ではないかということです。

ビットコインは利息や配当などの定期収益も実用的な使い道もなく、役に立たないと批判されている。そこへもってきて、その取引記録を承認することで新たに発行されたビットコインを報酬としてもらうマイニング(採掘)は、膨大な計算作業を必要とするため驚くほど電気を食う。オランダのエコノミスト、アレックス・デフリース氏はマイニングの消費電力量が世界全体で1年間に78テラワット時になると試算した。これは人口約2000万人の南米チリの年間消費量に等しい。ビットコイン1回の取引ではビザカードで43万6000回決済するのと同じ量の電力を使う。

出所:日経新聞

「仮想通貨の人気と環境保護は相入れそうにない。」とこの記事は主張しています。

ただ、ビットコインへの投資家が注意すべきはこの環境問題だけではありません。

米国のバロンズ紙は2月21日付けの「Bitcoin Mining Is Big in China. Why Investors Should Worry」という記事の中で、ビットコインに投資することは倫理的な問題をかかえることになると指摘しています。

大量の新規ビットコインは、中国北西部の新疆ウイグル族のイスラム教徒やその他の少数民族が強制収容所に収監されている地域から来ている。ケンブリッジ・ビットコイン電力消費量指数によると、2020年4月時点で、中国はビットコインの全マイニングの65%を担っており、そのうち36%が新疆で行われている。新疆では石炭が豊富に供給されており、他の地方よりはるかに安くマイニングができるからである。

出所:バロンズ紙記事を意訳

新規のビットコインの約20%が新疆で採掘されており、そこは世界で最もひどい人権侵害が行われている場所だということ、ビットコインの投資家はこの事実がもたらす問題に注意を払うべきというのが、同記事の主張です。

指摘している具体的なリスクは2つ。ひとつめは、米国民の間で新疆の人権侵害への懸念があるため、同地域に関連する資産を保有することは、広報上の問題が発生するリスクがあること。

ふたつめは、米国政府により規制がかけられる可能性があることです。ビットコインの新疆とのつながりは、中国製品への米国の依存度を下げようとしている米国政府に警戒感をもたせるには十分です。

財務省は新疆で大規模な事業を展開しているビットコインの採掘会社に制裁を加えたり、地域へのビットコインのリンクを「研究」しているとの勧告を出したり、グローバルな金融機関に暗号通貨を保有するもう一つのリスクを警告したりする可能性がある。

特定のビットコインの地理的な出所を特定するのは非常に複雑な作業を要する困難なものだそうです。ですから、ビットコインを保有しているからといって即それが人権侵害に加担していることにはなりませんが、関わり合いが全くないと否定することもできません。汚名を着せられるリスクがあることは、機関投資家にとっては大きな問題でしょう。

バロンズはこのような言葉で記事を締めくくっています。

権力を分散させるために開発されたビットコインが、中央集権に固執する政府に支配されている中国のような国に依存することは、長い間ひとつの皮肉として受け取られてきた。
しかし、中国に依存することと、新疆に依存するのは別物だ。
ビットコインを買わない理由としては、倫理的にも規制的にも優れた理由がたくさんあるが、そのリストに新疆を追加する。

出所:バロンズ紙記事を意訳

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