AI向けデータセンターの拡大を背景に、光通信関連企業への注目が一段と高まっています。その中でも、光通信ネットワーク技術を手掛けるコヒレント(COHR)は、AIインフラ投資の拡大による恩恵を受ける代表的な企業の1つです。
コヒレントは2026年8月12日の米国株式市場終了後、2026年度第4四半期決算を発表しました。売上高、利益ともに市場予想を上回り、さらに次四半期についても強気のガイダンスを提示しました。
それにもかかわらず、決算発表後の株価は時間外取引で下落しました。今回は、コヒレントの決算内容を確認するとともに、好決算でも株価が売られた理由、そしてAI時代における光通信市場の成長性について考えていきます。
第4四半期は売上高・EPSともに市場予想を上回る
コヒレントが発表した2026年度第4四半期の調整後1株当たり利益(EPS)は1.74ドルとなりました。前年同期の1.00ドルから大幅に増加し、アナリスト予想の1.62ドルも上回っています。
売上高は20億5,000万ドルとなり、前年同期比34%増加しました。市場予想の19億9,000万ドルを上回っており、AIデータセンター向けを中心とした光通信需要の強さが業績に反映された形です。
特に注目したいのは、単に売上高が増加しただけでなく、利益の伸びも大きかった点です。売上高の拡大とともに収益力も改善していることは、コヒレントが成長局面に入りつつあることを示しています。
2027年度第1四半期のガイダンスも強気
決算以上に注目されたのが、2027年度第1四半期の業績見通しです。
コヒレントは調整後EPSを1.85ドル〜2.05ドルと予想しました。市場予想は1.77ドルだったため、会社側の見通しはそれを大きく上回っています。
売上高についても、中間値で23億ドルを見込んでいます。こちらもアナリスト予想の21億4,000万ドルを大きく上回りました。
ジム・アンダーソンCEOは、旺盛な顧客需要を抱えた状態で2027年度を迎えていると説明しています。また、データセンター内部の接続技術が、従来の銅線を利用した接続から光通信へ移行しつつあることにも言及しました。
つまり、今回の好調な数字は一時的な受注増加だけではなく、AIデータセンターの構造変化を背景とした需要拡大によって支えられていると考えられます。
好決算なのにコヒレント株が下落した理由
今回の決算で興味深いのは、実績とガイダンスがともに市場予想を上回ったにもかかわらず、株価が下落したことです。
コヒレント株は決算発表当日の8月12日、通常取引で8.2%上昇していました。さらに過去12カ月では200%以上上昇しており、投資家の期待は決算発表前からかなり高まっていました。
そのため、「予想を上回る決算」だけでは株価をさらに押し上げる材料として十分ではなかった可能性があります。
決算発表後の時間外取引では約5%下落し、翌8月13日のプレマーケットでも7%安の331.5ドルとなりました。
同業のルメンタム・ホールディングス(LITE)も直前に好決算を発表していたため、光通信関連企業に対する市場の期待値そのものがかなり高くなっていました。好材料が株価に織り込まれていたところに、短期的な利益確定売りが出たと考えるのが自然です。
AIデータセンターでは「銅から光」への移行が進む
コヒレントの中長期的な成長を考えるうえで最も重要なのが、データセンター内部における通信技術の変化です。
生成AIでは、大量のGPUやAIアクセラレーターを高速で接続する必要があります。AIモデルが大型化すればするほど、サーバー間でやり取りされるデータ量も増加します。
従来の銅線を使った接続方式では、通信距離、消費電力、帯域幅などの面で限界が出てきます。そのため、AIデータセンターでは高速かつ低消費電力で大量のデータを送受信できる光通信技術への移行が進んでいます。
この「銅から光へ」という変化は、AIインフラ市場における重要な構造変化の1つです。
コヒレントは光トランシーバーやレーザー、光通信部品などを幅広く手掛けており、この市場拡大から直接的な恩恵を受ける立場にあります。
生産能力拡大が次の成長を左右する
需要が強い一方で、今後重要になるのが供給能力です。
ジム・アンダーソンCEOは、生産能力の拡張や新しい成長プラットフォームの立ち上げを進めていると説明しています。
AIデータセンター投資が拡大しても、必要な光通信部品を十分に供給できなければ売上高の成長にはつながりません。そのため、今後は需要そのものだけでなく、コヒレントがどの程度のペースで生産能力を拡大できるかが重要になります。
今回の第1四半期ガイダンスで売上高23億ドルという強気な数字を示したことは、少なくとも現時点では需要だけでなく供給面についても一定の自信を持っていることを示しています。
予想PER39倍は成長期待の高さを反映
一方で、株価のバリュエーションには注意が必要です。
コヒレントの予想株価収益率(PER)は約39倍まで上昇しています。1年前は約25倍だったため、この1年間で市場から与えられる評価は大きく切り上がりました。
同業のルメンタム・ホールディングスも予想PER約41倍で取引されており、光通信セクター全体にAI成長プレミアムが付いていることが分かります。
高いPERが正当化されるためには、今後も高い売上成長と利益成長を継続する必要があります。成長率が少しでも市場の期待を下回れば、今回のように好決算でも株価が下落する可能性があります。
今後は決算数字そのものだけではなく、市場が事前にどの程度の成長を織り込んでいるかを見ることが重要になります。
コヒレントはAIインフラ拡大の「通信部分」を担う企業
今回の決算を総合すると、コヒレントの事業環境そのものは依然として強いと考えられます。
売上高は前年同期比34%増加し、EPSも市場予想を上回りました。さらに次四半期についても市場予想を上回る売上高と利益を見込んでいます。
一方、株価が過去12カ月で200%以上上昇していることから、市場の期待値も非常に高くなっています。そのため、短期的には決算の良し悪し以上に、バリュエーション調整による株価変動が大きくなる可能性があります。
ただし、AIデータセンターの拡大によってサーバー間通信量が増加し、接続方式が銅線から光通信へ移行するという構造的なトレンドが続く限り、コヒレントには大きな成長機会が残されています。
AI市場ではエヌビディアなどのGPUメーカーに注目が集まりがちですが、AIシステムを構築するには大量のGPUを高速につなぐ通信技術も欠かせません。
コヒレントは、その「AIをつなぐインフラ」を提供する企業として、今後もAI投資拡大の恩恵を受ける可能性があります。今後の決算では、データセンター向け売上高の伸び、生産能力の拡大、利益率の改善が重要な確認ポイントになりそうです。
情報ソース: Barron’s: “Coherent Stock Drops Despite Earnings Beat and Strong Outlook” (By Nate Wolf, Aug 13, 2026)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。