エヌビディア株に市場は悲観しすぎか PER14倍が示すAI王者の再評価余地

2026年の半導体セクターは、AI需要の拡大を背景に大きな上昇相場を見せています。マイクロンやAMD、インテル、マーベルなどが力強く上昇し、SOXXなどの半導体関連指数も大幅な上昇となっています。

しかし、その一方で、AI半導体ブームの中心にいたはずのエヌビディア(NVDA)は、年初からの上昇率が5%未満にとどまり、明確に出遅れています。2026年7月6日時点の株価は195.60ドルで、バロンズ誌が5月に推奨した当時の226ドルを大きく下回る水準です。

市場では、エヌビディアがAIチップ市場でシェアを失うのではないかという懸念が広がっています。ただし、米バロンズ誌が報じたゴールドマン・サックスのアナリスト、ジェームズ・シュナイダー氏の分析を見ると、現在の株価にはすでに相当程度の不安が織り込まれている可能性があります。

本記事では、エヌビディアの株価低迷の背景、成長シナリオ、そしてバリュエーション面から見た投資妙味について整理します。

エヌビディア株が出遅れている理由

エヌビディア株が半導体セクターの中で出遅れている最大の理由は、顧客の内製化懸念です。

アルファベット(GOOGL)やアマゾン(AMZN)といった巨大テック企業は、引き続きエヌビディアのGPUを大量に購入しています。しかし同時に、自社で開発したカスタムAIチップ、いわゆるASICの活用も拡大しています。

さらに、AI処理の一部がAMDやインテルのCPUに分散していくとの見方もあります。こうした動きが、エヌビディアの市場シェア低下懸念につながっています。

ただし、ここで重要なのは、シェア低下と成長鈍化は必ずしも同じ意味ではないという点です。AI市場全体の規模が急拡大している局面では、エヌビディアのシェアが多少低下しても、売上高そのものは大きく伸び続ける可能性があります。

市場はシェアの低下というネガティブな物語に注目しすぎており、AIインフラ市場そのものが拡大している事実を過小評価しているのかもしれません。

カスタムチップの台頭は脅威か

ハイパースケーラーが自社製チップを開発する流れは、今後も続くと考えられます。クラウド企業にとって、AI計算コストの削減は極めて重要な課題だからです。

ただし、カスタムチップは特定用途に最適化される一方で、汎用性やソフトウェアエコシステムの面ではエヌビディアに劣る部分があります。エヌビディアの強みは、単に高性能なGPUを販売しているだけではなく、CUDAを中心とした開発環境、ネットワーク、CPU、ソフトウェアを含む総合的なAIプラットフォームを持っている点にあります。

つまり、顧客が一部の処理を自社チップに移したとしても、AIインフラ全体からエヌビディアが外されるとは考えにくい状況です。

むしろ、AI市場が拡大するほど、学習、推論、データセンター、ネットワークを含めた総合力が問われるようになります。この点で、エヌビディアは依然として非常に強い競争優位性を持っています。

次世代ハードウェアが反撃のカギになる

エヌビディアは、現在の不安を払拭するための次世代製品も準備しています。その中心となるのが、2026年後半に量産出荷が見込まれるベラ・ルービンです。

ベラ・ルービンは、AI計算性能をさらに引き上げる次世代プラットフォームとして位置づけられています。もし出荷開始後に競合製品やカスタムチップとの性能差を再び示すことができれば、現在のシェア低下懸念は大きく後退する可能性があります。

また、AI市場の主戦場は、モデルを作る学習フェーズから、実際にAIを利用する推論フェーズへと移りつつあります。エヌビディアはこの流れに対応するため、スタンドアロン型のベラCPUも投入しています。

同社はベラCPUだけで今年200億ドルの収益を見込んでおり、潜在的な総市場規模は2000億ドルに達すると見ています。これは、エヌビディアがGPU企業にとどまらず、CPU領域にも本格的に踏み込もうとしていることを意味します。

バリュエーションは過度に悲観を織り込んでいる可能性

ゴールドマン・サックスのジェームズ・シュナイダー氏は、エヌビディアに対する投資判断を「買い」、目標株価を285ドルに維持しています。

同氏の予測では、来年のエヌビディアの売上高は6350億ドルに達し、前年比55%成長となる見込みです。これは、ASICが一定のシェアを奪い、CPU競合が台頭するという慎重な前提を織り込んだうえでの見通しです。

それにもかかわらず、現在の株価は同氏が予想する2027年利益に対してPER14倍未満で取引されているとされています。

前年比55%の売上成長が見込まれる企業が、PER14倍未満で評価されているとすれば、これはかなり低い水準です。市場は、エヌビディアを高成長企業ではなく、成長が鈍化した成熟企業のように評価しているとも言えます。

もちろん、AIチップ市場の競争激化や、顧客の内製化リスクは無視できません。しかし、現在の株価には、それらのリスクがかなり織り込まれている可能性があります。

エヌビディアはまだAI投資の中心にいる

エヌビディアの株価低迷は、市場がAIチップのシェア低下リスクを強く意識していることの表れです。しかし、AI市場全体の拡大、次世代製品ベラ・ルービンの投入、推論需要の成長、そしてCPU市場への展開を考えると、同社の成長ストーリーが終わったと見るのは早計です。

現在の株価は、むしろ過度な悲観によって割安に放置されている可能性があります。特に、売上高が高い成長率を維持する見通しでありながら、PERが低水準にある点は注目に値します。

エヌビディアは、かつてのように一方的に市場を独占する存在ではなくなるかもしれません。しかし、AIインフラ全体の中核企業であり続ける可能性は高いと考えられます。

短期的には株価の停滞が続く可能性もありますが、中長期の視点では、現在の低迷は買い好機として評価できる局面かもしれません。市場がシェア低下という不安から、売上成長と利益成長という現実に再び目を向ければ、目標株価285ドルに向けた見直し買いが入る可能性があります。

情報ソース: Barron’s: “Nvidia’s Bargain Price Already Reflects Lost Market Share, Says Goldman” (By Adam Clark and Anita Hamilton, July 6, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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