エアビーアンドビー(ABNB)は、世界中で短期賃貸市場をリードする存在ですが、現在、厳しい課題に直面しています。都市部での規制強化が進む中、同社はどのように成長戦略を描いているのでしょうか。
バルセロナでの規制強化と市場縮小のリスク
スペインのバルセロナ市では、観光客による住宅市場の圧迫を懸念する声が高まり、観光用アパートメントのライセンス更新を停止する方針が打ち出されました。この政策により、2028年末までに1万件以上の観光アパートが市場から消える見込みです。エアビーアンドビーにとって、バルセロナは重要なマーケットの一つであり、今回の動きは無視できない影響を及ぼしています。
エアビーアンドビーの物件オーナーたちは、42億ユーロ(約48億ドル)を超える補償を求めて争う構えを見せています。しかし、市は観光客数の増加による住宅価格高騰や地域社会への負荷を重く見ており、エアビーアンドビーにとっては厳しい環境となっています。
ニューヨークでも2023年に短期賃貸規制が強化され、1万9000件近いリスティングが市場から消えました。エアビーアンドビーは年次報告書(10-K)の中で「他地域でも同様の規制が拡大すれば、事業と財務に重大な影響を及ぼす可能性がある」と警告しています。
世界各地で進む短期賃貸規制の波
バルセロナやニューヨークに限らず、世界各地でエアビーアンドビーに対する規制は強化の流れにあります。アムステルダム、パリ、ベルリンなどでも短期賃貸に対する制限が厳しくなっており、同社は柔軟な対応を迫られています。
エアビーアンドビーの広報担当者は、「ニューヨークからバルセロナに至るまで、過剰な一律規制は地元の課題解決にはつながっていない」とコメントしています。特にバルセロナにおいては、2014年に観光用ライセンスの発行を停止したにもかかわらず、住宅問題やオーバーツーリズムはむしろ悪化していると指摘しています。
成長戦略:新規事業と市場拡大への投資
エアビーアンドビーは、規制リスクに対応するために事業の多角化を積極的に進めています。今年2月、同社は2億〜2億5000万ドルを新規事業立ち上げに投資し、これによって10億ドルの新たな売上を目指すと発表しました。
具体的な内容は未発表ですが、アナリストたちは交通手段のレンタルや、ホスト向けの住宅改善支援サービスなどが候補になると予測しています。また、ラテンアメリカやアジアといった新興市場での拡大も重視しており、地域分散を進めることでリスクヘッジを図っています。
「体験」事業の再始動とマージン拡大への期待
さらに、エアビーアンドビーは「体験(エクスペリエンス)」事業を再始動させました。この取り組みは、宿泊施設と合わせて現地のツアーやアクティビティを提供するもので、2016年に開始されたものの、パンデミックにより一時中断していました。
ゴードン・ハスケット・リサーチ・アドバイザーズのアナリスト、ロバート・モリンズ氏は、今回はより高いマーケティング力とプラットフォーム統合により成功確率が高いと分析しています。エアビーアンドビーは「体験」取引に対して約20%の手数料を取るビジネスモデルを採用しており、宿泊手数料(約3%)に比べて高い利益率が期待できる分野です。
まとめ:課題を乗り越えるための柔軟な戦略がカギ
エアビーアンドビーは、世界的な規制強化という大きな逆風に直面していますが、新規事業開発や新興市場への進出によって成長の道を模索しています。また、高利益率の「体験」事業を強化することで、収益性の向上も目指しています。
今後もエアビーアンドビーが市場の変化に柔軟に対応し続けられるかが、投資家や市場関係者の注目ポイントとななりそうです。
*過去記事はこちら エアビーアンドビー ABNB