人工知能、がん研究、クリーンエネルギーといったテーマに特化したETF(上場投資信託)は、個別銘柄を詳細に分析する必要なく、トレンドに乗った投資を可能にする便利な手段として注目されています。しかし、近年の調査によると、これらのファンドは投資家にとって満足のいく結果を残していないケースが多いことが明らかになっています。
アーク・イノベーションETFの厳しい現実
テーマ型ETFの中でも特に有名な例として、キャシー・ウッド氏が運用するアーク・イノベーションETF(ARKK)があります。このファンドはテスラ(TSLA)やズーム・コミュニケーションズ(ZM)といった注目企業への投資を通じて、一時的に高い注目を集めました。しかし、2022年にはポートフォリオが67%も減少し、多くの投資家に損失をもたらしました。過去3年間の年率リターンはマイナス9.9%と厳しい状況が続いています。
テーマ型ETF全体のパフォーマンス
モーニングスターのアナリストであるジェフリー・プタク氏は、少なくとも3年以上のトラックレコードを持つ270以上のテーマ型ETFを分析し、投資家が実際にどのようなリターンを享受しているかを調査しました。調査の結果、過去3年間でこれらのETFに平均1ドル投資した場合、年間7%の損失が生じていることが判明しました。これは、S&P 500が年間約10%のリターンを上げているのとは対照的な結果です。
また、ARKKを除いた場合でも、テーマ型ETFの平均年間損失は約6%となっており、全体的に厳しいパフォーマンスが続いていることがわかります。
人気のテーマ型ETFの事例
ファースト・トラストやiシェアーズ、グローバルXといった運用会社が手掛けるテーマ型ETFの中で、以下のファンドが特に注目されています。
- ファースト・トラスト・ダウ・ジョーンズ・インターネットETF(FDN)
- ファースト・トラスト・クラウド・コンピューティングETF(SKYY)
- iシェアーズ米国医療機器ETF(IHI)
- iシェアーズ・グローバル・クリーン・エナジーETF(ICLN)
これらのファンドはテーマ型ETFの中でも人気が高いものの、投資家が買いのタイミングを間違えた場合、大きな損失を被るリスクが伴います。
ファンドマネージャーの視点と投資家の行動
一部のファンドマネージャーは、テーマ型ETFが「中核的な投資」ではなく、「新たなトレンドにエクスポージャーを得るための補助的なポジション」であることを強調しています。例えば、グローバルXの商品研究開発責任者ペドロ・パランドラニ氏は、「人々がパーティーに遅れて参加する」と指摘し、投資家がテーマ型ETFを購入するタイミングが悪いことを問題視しています。
それでも、堅調なリターンを記録しているファンドも存在します。例えば、ファースト・トラストのクラウド・コンピューティングETFは、過去3年間で年間約8.5%のリターンを達成しています。
テーマ型ETFの今後の展望
iシェアーズのテーマ型ETFチームは、医療機器セクターでは新製品のアップグレードサイクル、クリーンエネルギーセクターでは電力需要の増加が、近い将来の追い風になる可能性があると述べています。一方で、長期的なパフォーマンスを求める投資家にとっては、慎重な戦略が求められます。
テーマ型ETFは、新たな市場トレンドを活用するための魅力的なツールですが、そのリスクを理解し、適切なタイミングでの投資が重要です。特定のセクターやテーマへの集中投資には、リターンだけでなくリスクも伴うことを忘れずに、慎重に投資判断を行うことが求められます。