2024年に入り、ビストラ(VST)の株価は驚異の269%の上昇を記録しています。この株価上昇は、特にAIデータセンター向けの電力需要が急増していることが背景にあります。ビストラは、豊富な原子力および天然ガス資産を活用し、エネルギー供給で強みを発揮しており、大手テクノロジー企業が進めるデータセンター拡張計画を支える重要な役割を担っています。また、エネルギー規制緩和の動きも、同社にとってプラスの影響を与えています。
しかし、ジェフリーズのアナリストであるジュリアン・デュモラン=スミス氏は、この上昇はAIデータセンターからの電力需要増加がもたらす潜在的な利益を十分に反映していないと指摘しています。
「最近の株価上昇にも関わらず、我々はこの株の価値を引き続き評価しています」とデュモラン=スミス氏は述べ、ビストラ株の「買い」評価を維持するとともに目標株価を143ドルから167ドルに引き上げました。11月15日の米国市場でビストラ株は2.67%上昇し、終値は142.15ドルとなりました。
独立系原子力発電事業でのビストラの地位
ビストラは独立系の原子力発電所を所有する企業として業界第2位の地位を占めています。同業のコンステレーション・エナジー(CEG)がその規模で一歩上回るものの、ビストラも高い競争力を持っています。
同社は特にAIデータセンターに必要とされる電力の供給において有利な立場にあり、大手テクノロジー企業がこの分野に注力する中で、エネルギー取引が次々と進んでいます。例えば、アルファベット(GOOGL)とアマゾン(AMZN)は、それぞれ2030年までに小型原子炉を建設しデータセンターに電力を供給する計画に資金提供を行っています。また、マイクロソフト(MSFT)はコンステレーション・エナジーと契約し、スリーマイル島の原子炉からの電力供給を受けることになっています。
ビストラの資産と潜在的な市場シェア
デュモラン=スミス氏は、ビストラが所有する豊富な原子力および天然ガス資産により、AIデータセンター市場で確実にシェアを拡大すると予測しています。同氏によれば、ビストラの競争力は、他社に対する優位性を持続的に維持する要因となります。
しかし、先週の連邦エネルギー規制委員会による裁定では、アマゾンがペンシルベニア州にあるビストラの原子炉にデータセンターを直接接続する計画が認可されませんでした。この裁定は、原子炉の安全性や規制に関する懸念が背景にあります。
これにより、データセンターへの直接接続によるコスト削減効果が見込めなくなったため、今後の交渉でビストラにとって一定のハードルとなる可能性があります。この裁定を受け、一時的にビストラ株価は下落しました。それでも、同社経営陣はこの結果を過度に懸念せず、データセンター向けの取引獲得に引き続き積極的な姿勢を見せています。
エネルギー規制緩和とビストラ株の見通し
エネルギー規制緩和の可能性もビストラ株にとって追い風となっています。特に、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任した場合、さらなる規制緩和が進むと予想され、原子力事業を展開する企業にとって好材料となることが期待されます。
第1期トランプ政権下では、原子力発電に対する規制が緩和され、新規原子炉建設の手続きが迅速化されるなど、業界にとって追い風となる政策が実施されました。また、原子力をクリーンエネルギーの一部として位置づけ、政府の支援を強化したことにより、多くの原子力企業が恩恵を受けました。こうした過去の実績から、トランプ氏が再任された場合、ビストラにとっても同様の恩恵が期待されます。
ビストラは、このような政策変動や市場ニーズの変化に柔軟に対応し、安定した成長を見込める企業として注目されています。AIデータセンターへの電力供給市場での競争激化が予測される中、同社の資産構成と成長戦略は大きな武器になると考えられます。
ビストラ株は今後も注視すべき銘柄として、市場参加者からの関心が高まると期待されます。