米国の経済誌バロンズが恒例の来年の有望株10銘柄を選定して発表しました。過去13年間、バロンズは毎年12月になると、この10銘柄を発表しています。
昨年12月に選ばれた2022年の10銘柄の今年のパフォーマンスは以下のとおりでした。
デコボコがありますが、10銘柄の平均のトータルリターンは-1.7%でS&P 500の-12.1%を上回っています。
会社名(ティッカー) | 21年12月17日終値 | 22年12月14日終値 | トータルリターン |
アマゾン・ドット・コム(AMZN) | $170.02 | $91.58 | -46.1% |
AT&T(T) | 17.96 | 18.9 | 12.3% |
バークシャー・ハサウェイ(BRK.A/BRK.B) | 443,304 | 468,020 | 5.6% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | 55.16 | 38.36 | -30.1% |
ハーツ・グローバル・ホールディングス(HTZ) | 20.94 | 16.02 | -23.5% |
IBM(IBM) | 127.4 | 149.86 | 23.5% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 168.23 | 179.76 | 9.7% |
ノードストローム(JWN) | 20.21 | 17.58 | -10% |
シェル(SHEL) | 42.11 | 56.76 | 39.7% |
ビザ(V) | 211.88 | 213.32 | 1.5% |
*10銘柄の平均 | -1.7% | ||
*S&P 500 | -12.1% |
2022年の10銘柄の選定理由は以下の記事をご参照ください。
「バロンズ選定 2022年のトップストック10(1)」
「バロンズ選定 2022年のトップストック10(2)」
2023年の10銘柄に選ばれた会社は以下のとおりです。
・アルコア(AA)
・アルファベット(GOOG/GOOGL)
・アマゾン・ドット・コム(AMZN)
・バンク・オブ・アメリカ(BAC)
・バークシャー・ハサウェイ(BRK.A/BRK.B)
・コムキャスト(CMCSA)
・デルタ航空(DAL)
・メドトロニック(MDT)
・マジソン・スクエア・ガーデンスポーツ(MSGS)
・トール・ブラザーズ(TOL)
選定の理由について、記事を2回に分けてご紹介します(2回目はこちら)
アルコア(AA)
アルコアが生産しているアルミニウムは、銅ほど注目されていませんが、再生可能エネルギーに利用され、軽量でリサイクル可能であることから、低炭素社会にとって同様に重要な素材であることは間違いないとバロンズは評価しています。
アルコアは、おそらく世界最高の純粋なアルミニウム生産企業であり、最も環境に優しい企業で、同社は製錬事業のエネルギーの約80%を再生可能エネルギー(主に水力発電)から得ていることを同誌は評価しています。
アルミニウム価格が2022年春のピークから35%下落したため、アルコアの株価は今年24%下落し、現在は約43ドルと2022年の高値98ドルの半分以下の価格となっていることをあげ、2022年の利益の9倍、2023年の底値予想の14倍で取引されていることをバロンズは指摘しています。また、アルコアはクリーンなバランスシートを持っていますが、そのことが評価されていないともしています。
バロンズが指摘する同社にとってのリスクは世界のアルミニウム需給の約半分を占める中国の動向です。しかし、2023年に中国経済が強くなれば同社にとってはチャンスとなるとしています。また、中国は環境保護の観点からアルミニウム製錬所の増加を抑制する計画であり、これはアルコアを強気に見る材料となる可能性があるとも述べています。
「アルコアは最も環境に優しい総合メーカーであり、長期的な需要の増加から利益を得る態勢が整っている」と、キンドレッド・キャピタル・アドバイザーズのの最高投資責任者、スチーブ・ガルブレイス氏が評価していることもバロンズは付け加えています。
アルファベット(GOOG/GOOGL)
アルファベットの株価は2022年に34%下落しました。株価を好転させる材料としてバロンズが指摘しているのは、アルファベットのコストベースが高すぎるため、経営陣はその削減のために積極的な行動を取るべきだということです。
同社の従業員数は今年20%増加し、2018年からほぼ倍増しています。投資家のメッセージは経営陣に届いているようで、最近MapsとWazeのチームを統合する動きがあり、今後、大幅な削減が行われる可能性があるとバロンズは見ています。
バロンズがもうひとつ指摘しているのが配当金の支払いの開始です。18年前に上場して成熟した収益性豊かな会社となった今、そろそろ配当金を支払う行うべき時だと指摘しており、その可能性があることも選定の理由のひとつにあげています。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)
アマゾンのクラウドコンピューティングと小売部門が今年減速したため、同社の株価は45%下落し、直近では88ドルとなっています。 過去3年間にフルフィルメントと輸送に800億ドル以上の投資を行った同社は、オンライン小売事業のコスト削減と効率化を実現しており、来年はより良い年になると思われるとバロンズは評価しています。
バロンズが選定理由として引用しているのが、SVBモフェットネイサンソンのアナリストであるマイケル・モートン氏の評価です。同氏は最近、アマゾンのカバレッジを開始し、「アウトパフォーム」の評価と118ドルの目標株価を設定しています。
同氏は、アマゾンの小売部門の営業利益率は、有益な広告収入を除くとマイナスになると推定しています。アマゾンは顧客を「喜ばせる」ことを目指す一方で、小売事業で利益を上げる必要があり、その方向で動いていると同氏は見ており、「我々はトンネルの終わりにいると信じている」と述べています。
来年の利益の50倍と、アマゾンの株価は安くはないものの、2つの支配的な事業を持つ企業は少なく、Eコマースに並ぶ2つ目の事業は、高収益のクラウド事業、Amazon Web Servicesであり、十分な成長性があるとバロンズは評価しています。
アマゾンの株価は、前回の大暴落の後、2009年に記録した270%の上昇には及ばないかもしれないもの、より良い年になる準備はできているように思えるとバロンズは述べています。
バンク・オブ・アメリカ(BAC)
バンク・オブ・アメリカの株価は今年に入って25%あまり下落し、32ドルで取引されています。2023年の予想利益3.69ドルの9倍以下で取引されている同株式は割安に見え、利回りも2.8%に達しているとバロンズは評しています。
同行は主に富裕層向けの融資を行っており、景気後退局面でも持ちこたえられること、短期金利の上昇で利ざやも伸びていることなどをBACの強みだと同誌は指摘しています。
バロンズが選定理由として引用しているのがウェルズ・ファーゴ証券のアナリスト、マイク・メイヨー氏の評価で「この業界を30年以上見てきたが、バンク・オブ・アメリカほどファンダメンタルズが改善しているにもかかわらず、株価がこれほど低迷した銘柄を見たことがない。バンク・オブ・アメリカは他のどの大手銀行よりもバランスシートのリスクを減らし、過去半世紀で最も不況に備えている」と述べています。
バークシャー・ハサウェイ(BRK.A/BRK.B)
このウォーレン・バフェット氏の会社は、究極のディフェンシブ・メガ株であり、投資家のポートフォリオで強く考慮されるに値するとバロンズは高く評価しています。
S&P500のトータルリターンが15%マイナスであるのに対し、同社のAクラス株は今年4%上昇しました。そのおかげでバークシャーは、失速したテスラ(TSLA)とメタ・プラットフォームズ(META)を抜いて、時価総額6800億ドルでトップランキング5位にランクインしたとバロンズは今年の株価のパフォーマンスをほめています。
2023年の見通しも良好だと同誌は見ています。オクシデンタル石油(OXY)を100億ドル、シェブロン(CVX)を約200億ドルなど積極的に株式を購入し、損害保険会社のアレガニーを120億ドルという魅力的な条件で買収することに成功したことをとりあげ、これらの投資は、短期金利が4%に上昇した現在、バークシャーの1,000億ドルの現金からの収入と同様に、収益を引き上げてくれるとバロンズは見ています。
バークシャーの収益力は、鉄道、保険会社、エネルギーなど幅広い事業のおかげで、年間300億ドル以上にも上っており、2022年末見込みの簿価の約1.4倍と、5年平均に近い水準で取引されている株価は妥当な水準にあると思われるとバロンズは評しています。
リスクは1つ。バフェット氏が92歳であることから、CEOとしての寿命が長いことを同誌は指摘しています。