有事に強い米国株11選 イラン危機でも下がりにくいディフェンシブ銘柄を徹底分析

世界中を揺るがす地政学的な危機。ウクライナや中東での紛争が株式市場に影を落とす中、多くの投資家は「危機に強い銘柄」を探しています。

有事の際、私たちは直感的に軍需産業やエネルギー関連株に飛びつきがちですが、データは少し異なる物語を語っています。今回は、マーケットウォッチの記事が報じた「過去3つの重大な地政学的危機を乗り越えた11の銘柄」のデータに基づき、激動の時代におけるポートフォリオ戦略の将来性を分析します。

「有事=原油買い」の罠と、真の防衛ライン「流動性」

危機が勃発した際、投資家が最も警戒すべきは「市場の流動性の枯渇(買い手と売り手が極端に減り、適正価格で取引できなくなる状態)」です。

興味深いことに、マーケットウォッチの記事が報じた優良銘柄のリストからは「原油・ガス関連株」が意図的に除外されています。その理由は、エネルギー株の急騰が「市場の流動性への耐性」ではなく、単なる「商品価格の変動」に依存しているためです。

ペンシルベニア大学とシカゴ大学の過去25年にわたる研究が示す通り、「ある危機で流動性低下への耐性が高かった銘柄は、次の危機でも耐性を示す」という法則があります。つまり、将来を見据えた場合、ニュースの見出しに左右されるボラティリティの高い銘柄を追うよりも、パニック相場でも安定して売買が成立する「構造的に流動性の高い銘柄」を保有することが、ポートフォリオの致命傷を防ぐ鍵となります。

過去の地政学的危機を乗り越えた11銘柄

企業名過去の地政学的危機の間の平均リターン(※)GICS産業セクター
クローガー(KR)+16.8%生活必需品流通・小売り
ターゲット(TGT)+6.5%生活必需品流通・小売り
ロッキード・マーチン(LMT)+5.9%航空宇宙・防衛
ファクトセット・リサーチ・システムズ(FDS)+4.5%資本市場
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)+3.7%食品
ブロードコム(AVGO)+3.6%半導体・半導体製造装置
アドビ(ADBE)+2.6%ソフトウェア
マイクロソフト(MSFT)+2.3%ソフトウェア
コムキャスト(CMCSA)+2.1%総合電気通信サービス
ホーメルフーズ(HRL)+1.4%食品
キンセール・キャピタル・グループ(KNSL)+0.8%保険

※2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻(最初の12日間)、2025年6月のイラン空爆(12日間)、2026年2月27日から3月6日までの米国とイスラエルによるイラン攻撃の3つの期間の平均値です。

データが示す「現代の生活必需品」の再定義

同記事が報じた11の銘柄の顔ぶれを分析すると、投資における「ディフェンシブ(守り)銘柄」の概念が現代において大きくアップデートされていることが分かります。

伝統的な「食と日用品」の強さ:

クローガー、ターゲット、ホーメルフーズ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドといった企業が名を連ねています。特にクローガーは危機期間中において群を抜くパフォーマンスを示しています。どれほど世界情勢が不安定化しても、人々の「食べる」「生活する」という根源的な需要は消滅しないという強固な事実を裏付けています。

「デジタル世界の必需品」としてのITと通信:

注目すべきは、マイクロソフト、アドビ、ブロードコム、そしてコムキャストといったテクノロジー・通信企業が含まれている点です。一般的にハイテク株はリスクオン(景気拡大期)で買われるイメージがありますが、現代のビジネスインフラにおいて、クラウドサービスや基幹ネットワークは「電気や水道と同じ必需品」となっています。パニック時でも企業がマイクロソフトなどの契約を即座に打ち切ることはないため、これが強力な下値支持(流動性の維持)に繋がっていると分析できます。

「情報の確実性」と「純粋な防衛」への資金逃避

さらにリストには、防衛大手のロッキード・マーチンだけでなく、金融情報サービスのファクトセット・リサーチ・システムズや特殊保険のキンセール・キャピタル・グループが含まれています。

危機的状況下において、市場参加者は「不確実性」を最も嫌います。そのため、国家予算という確実な裏付けがある防衛産業であるロッキード・マーチンに資金が向かうのは自然な流れです。同時に、不透明な市場環境だからこそ「正確な金融データ(ファクトセット・リサーチ・システムズ)」や「リスクヘッジ(キンセール・キャピタル・グループ)」を提供する企業の需要が高まるのは、極めて理にかなった市場の自己防衛機能と言えます。

今後の展望:この11銘柄をどう活用すべきか?

ステート・ストリートSPDR S&P500 ETF(SPY)がマイナスリターンに沈む危機的状況下でも底堅さを維持したこれら11銘柄ですが、注意すべき点もあります。それは「危機が去り、市場に楽観論と流動性が戻った平常時には、パフォーマンスが市場平均を下回る可能性がある」ということです。

したがって、マーケットウォッチの記事が報じたこれら11銘柄の役割は、次の強気相場で市場を牽引し、資産を急拡大させることではありません。これらはポートフォリオにおける「強固なアンカー(錨)」です。資産の一定割合をこれらの流動性耐性の高い銘柄(食料、デジタルインフラ、防衛・データ)で固めておくことで、今後起こり得る予測不能な地政学的ショックに対する強力な保険となります。

情報ソース: MarketWatch: “11 stocks to harden your portfolio against Iran risk” (By Mark Hulbert, March 12, 2026)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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