2025年11月19日に公表されたエヌビディア(NVDA)の第3四半期決算は、市場予想を上回る結果となり、AI市場の勢いが依然として強いことを示しました。売上・EPSの両方がコンセンサスを超え、時間外取引で株価が反発したことからも、市場はこの結果をポジティブに受け取っています。本記事では、報道内容を手がかりに、今回の決算が示すAI投資サイクルの現在地と将来性を整理します。
第3四半期決算が示す「需要の持続性」
最も象徴的だったのは、売上570億ドル・EPS 1.30ドルと、いずれも予想を上回った点です。
特にデータセンター部門は圧倒的な数字で、売上512億ドルと前年比66%増。アナリスト予想を大幅に上回ったことから、生成AIや大規模推論モデル向けのGPU需要が単なる一過性ではなく、構造的な拡大にあることが改めて明確になりました。
データセンター向けGPUの需要は、AIサービスの本格導入が複数の産業に広がっていることを反映しており、企業のAIインフラ投資が継続している状況を裏付けています。
CFO発言に見る「GPU寿命の長期化」と収益モデルの強さ
コレット・クレスCFOが決算説明会で語った「A100 GPUが6年経過してもフル稼働している」という事実は、エヌビディアのビジネスモデルに二つの示唆を与えます。
- GPU資産の価値が長期間維持される
TCO削減につながり、顧客にとって投資効率が高い。 - 新世代GPUの需要がそれでも衰えない
ジェンスン・フアンCEOが「ブラックウェルは売り切れ状態」と述べている点が象徴的で、旧世代が長く使われるにもかかわらず、新しい性能向上が更新需要を喚起しています。
つまりエヌビディアは、「寿命の長い資産価値」と「最新GPUへの強い移行圧力」という、相反するように見える需要構造を同時に成立させる稀有な立場にあります。
AI投資の勢いは衰えていないのか
フアンCEOは「推論と学習の需要が加速度的に増加している」と述べています。これにデータセンター部門の前年比66%成長を重ねると、AI市場はまだ“後半戦”ではなく、“成長サイクルの中盤”に位置していると見るのが自然です。
現在、GPU需要を押し上げている主要な領域は次の3つです。
- 生成AIモデルの大型化
- 推論用途の普及(検索、サポート、エージェント)
- エージェント型アプリケーション(agentic applications)の拡大
これらは継続的なGPU需要を生み出す構造要因であり、サイクルが簡単に途切れる性質のものではありません。
中国を除外したガイダンスが意味する“底堅さ”
今回注目されるのは、同社が次期四半期(1月期)に売上650億ドル(中央値)という力強いガイダンスを示した点です。
そして、CFOはこの数字に中国の売上を一切含んでいないことを明言しています。
この事実は非常に重要で、次の二つことを示唆します。
- 地政学的な逆風の中でも成長が成立している
米中間の輸出規制や、中国企業がエヌビディア製GPUの購入を控えている状況にもかかわらず、ガイダンスは上振れ。
これは、AI需要が北米・欧州・中東を中心に広範囲で膨らんでいることを意味します。 - 将来的な上振れ余地を残す“保守的な見通し”
現在のガイダンスは中国を完全に除外した結果であり、中国が部分的にでも回復すれば追加的な需要が発生する余地があります。
つまり、リスク要因ではなく“ポジティブサプライズの余白”を残した数字とも解釈できます。
オープンAIとの提携未確定は「リスク」よりも「柔軟性」
エヌビディアとオープンAIの提携は依然として最終合意に至っておらず、10-Qでは「確約はない」と明記されています。最大1,000億ドル規模とされる投資案件が不確定である点は事実として押さえる必要があります。
しかし、クラウド大手やインフラ企業からの引き合いが非常に強い現状を踏まえると、この不確定要素が中期的な成長を大きく損なうリスクは限定的と見られます。むしろ、戦略的な柔軟性を維持していると解釈することも可能です。
将来性:成長のピークはまだ先にあるのか?
今回の決算には、AI投資がまだ途上にあることを裏付ける複数の材料が含まれていました。
- ハードウェア需要の持続
・ブラックウェル世代は売り切れ状態
・旧世代GPUも引き続き高稼働
・データセンター売上が予想超え - エコシステム全体の拡大
AIアプリの普及が、ソフト・サービス領域でもエヌビディア中心の循環を生み始めている可能性。 - 投資家心理の改善
決算前はAI関連銘柄に売り圧力が強かったものの、業績の強さで「AIテーマの持続性」が再確認され、需給面でも反発が期待される局面。
まとめ:AI投資サイクルは“まだ伸びしろが大きい”
今回の決算と経営陣コメントは、エヌビディアが依然としてAI市場成長の中心に位置していることを示しています。
- GPUの長寿命化
- ブラックウェルの逼迫
- データセンター売上の急拡大
- 中国を除外しても強いガイダンス
- 旧世代GPUの資産価値維持
- 推論需要の急増
これら複合的な要素が「AIコンピューティング需要の構造的な拡大」を裏付けています。
外部環境の変化によるリスクこそありますが、現時点では依然としてエヌビディアがAI投資サイクルの最大受益企業であり続ける構図に変化は見られません。
出典(情報源)
Barron’s : “Nvidia Scores an Earnings Beat. The Stock Is Climbing.”(2025年11月19日公開)
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA
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