2025年のAI投資ブームの中で、一部の企業は巨額の設備投資によってフリーキャッシュフロー(FCF)が減少しています。しかしその一方で、堅実なキャッシュ創出力を維持し、AIバブル崩壊への耐性を持つテック企業も存在します。マーケットウォッチは2025年10月18日付の記事で、AI熱の中で安定的な収益基盤を持つ「バブルに強い5銘柄」を紹介しています。
投資家が注目すべきは「フリーキャッシュフロー利回り」
記事によると、ベアードのテッド・モートンソン氏は「AIバブルを避けたい投資家は、フリーキャッシュフロー利回りに注目すべき」と述べています。これは、企業が生み出すキャッシュフローを時価総額で割った指標であり、1ドルの投資あたりどれだけの現金が生み出されるかを示すものです。AI向け設備投資が増大する中でも、FCFが増加している企業は限られています。
FCF利回りで選ばれた上位20社の中から注目の5銘柄
マーケットウォッチがS&P500およびナスダック100テクノロジーセクターの構成銘柄82社を対象にスクリーニングした結果、2026年の予想フリーキャッシュフロー利回りが高い企業として20社が抽出されました。その中でも特にアナリストの評価が高いのは以下の5社です。
- クアルコム(QCOM)
- ウェスタン・デジタル(WDC)
- デル・テクノロジーズ(DELL)
- アトラシアン(TEAM)
- セールスフォース(CRM)
これらの企業は、AI需要に直接・間接的に関わりながらも、キャッシュ創出力を高めている点で共通しています。
ハードウェア銘柄の強み:クアルコムとウェスタン・デジタル
モートンソン氏はクアルコムを「ファブレス型の強みを持つ半導体企業」として評価しています。製造設備を持たないことで固定費を抑え、大量のキャッシュを生み出す構造があるからです。同社はAIスマートフォンやウェアラブルデバイスなど、エッジAI向けの需要拡大も追い風になっています。
*過去記事「クアルコムはAI時代の覇者となれるか?エヌビディア・インテルとの本格対決へ」
ウェスタン・デジタルは、エンタープライズ向けHDDやストレージの価格支配力を強化しており、2024年末にはフリーキャッシュフローが黒字に転換。その後も上昇傾向を維持しています。
*過去記事「ウェスタン・デジタルが大化け候補?モルガン・スタンレーがトップピックに選定」
デル、アトラシアン、セールスフォースも堅調
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ワムシ・モハン氏は、デル・テクノロジーズがAIサーバー販売で利益率を高めるとともに、ストレージ事業拡大によってFCFを大きく伸ばすと指摘しています。
*過去記事「バロンズが「買い」推奨!デル・テクノロジーズのAI成長物語が始まる」
一方、アトラシアンはソフトウェア分野で堅実な成長を続けており、トゥルイスト証券のアナリストによれば年率13.7%のFCF成長が見込まれています。
*過去記事「ギットラブとアトラシアンが格下げ、AI時代に生き残れるか?」
セールスフォースは株価が年初来26%下落しているものの、AI機能「エージェントフォース」による反転の兆しが見られます。同社は今後6か月間で70億ドルの自社株買いを計画しており、2026年と2027年のFCF見通しも上方修正されています。
*過去記事「セールスフォース、AI戦略で強気転換 2030年度に600億ドルの売上目標を発表」
AIバブルの中で輝く「キャッシュ創出力」
AI関連株が市場全体を押し上げる中、フリーキャッシュフローを安定的に拡大している企業は少数派です。AI関連の熱狂が一服した際、最終的に残るのはキャッシュを稼ぐ企業です。クアルコムやデルのように、現実的なキャッシュ創出力を持つ企業こそが、AIバブルの逆風にも耐えるポートフォリオ防衛の核となりそうです。
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