2025年、世界経済は大きな変化の渦中にあります。米国のドナルド・トランプ大統領による第2期政権の政策は、関税の再導入や地政学的リスクの高まり、連邦準備制度の独立性への疑念など、先の見えない状況をもたらしています。しかし、そうした混乱の中でも新たな「勝ち組企業」が台頭しつつあります。
ソシエテ・ジェネラルが注目する「新秩序の勝者」
フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルのエクイティ・ストラテジストであるマクドゥーム・ムティーブ・ライナ氏は、「新しいグローバル貿易秩序が形成されつつある」と指摘しています。
同氏によれば、次のような条件を満たす企業が投資妙味のある「リーダー企業」として注目されます。
- 米国内の製造業投資(capex)の増加から恩恵を受ける
- 経済的主権(sovereignty)を重視する流れに乗る
- アメリカ国内での高い現地生産比率(local content)を持つ
逆に、効率性の低下や輸出減少に直面する企業は「遅れを取る可能性がある」としています。
有望な12社の顔ぶれ
ソシエテ・ジェネラルが6月に発表したフレームワークをもとに、高評価を得た12銘柄が以下の企業です。
- オラクル(ORCL)
クラウドベースのデータベースやエンタープライズソフトウェアを提供する大手IT企業です。AI関連需要の高まりとともに、データインフラ企業としての注目度が高まっています。 - リンデ(LIN)
産業用ガスの世界的リーダーで、半導体、ヘルスケア、製造など多分野に不可欠な基幹素材を提供しています。米国内の製造拠点強化に伴い需要拡大が見込まれています。 - キャタピラー(CAT)
建設機械や鉱業機器の世界的メーカー。米国内のインフラ投資やエネルギー開発の恩恵を受けやすい企業です。 - ハネウェル(HON)
航空宇宙、自動化、防衛、環境制御などを手がける複合企業。米政府との関係も深く、経済安全保障の文脈でも注目されています。 - パロアルトネットワークス(PANW)
サイバーセキュリティ分野のリーダー企業。地政学的リスクの増大により、企業や政府機関での導入が拡大しています。 - イートン(ETN)
電力管理製品や産業用部品を手がける製造業企業。再生可能エネルギー関連投資の波にも乗っています。 - プロロジス(PLD)
物流施設を中心とした不動産投資信託(REIT)の大手。米国内のサプライチェーン再構築やEコマースの拡大が追い風です。 - フォーティネット(FTNT)
中堅企業向けに強みを持つサイバーセキュリティ企業。パロアルトと並び、セキュリティ関連銘柄の代表格です。 - エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)
産業用ガスを手がけ、特に水素関連事業に力を入れています。クリーンエネルギー転換の文脈で存在感を増しています。 - クラウドフレア(NET)
ウェブインフラとセキュリティのサービスを提供する企業で、デジタル経済に不可欠な存在。エッジコンピューティング分野にも注力しています。 - フリーポート・マクモラン(FCX)
銅と金を中心とする鉱山開発会社。電気自動車や再エネに不可欠な銅の需要増が長期的な追い風とされています。 - クアンタ・サービシズ(PWR)
送電線や通信インフラの建設・保守を手がける企業。電力網の近代化や5G投資といった国家的プロジェクトに貢献しています。
これらの企業は、AI関連需要や再構築されるサプライチェーン、米国製造業の回復などのテーマと親和性が高いとされています。
一方、遅れを取る可能性がある企業は?
同じレポートでは、逆風にさらされている企業の例として、アップルやアマゾンが挙げられていました。関税リスクが特に大きいとされていたためです。他にもマクドナルド、スターバックス、ペイパル、ゼネラルモーターズ、ターゲット、ステランティス、コーパイ、ズーム、ダラーツリーといった企業がリスクを抱えた「ラガード銘柄」とされました。
「元には戻らない」という前提で考える
この先、世界貿易がどのように再構築されていくのかは不透明です。しかし、確かなのは「もはや以前のルールには戻らない」ということです。グローバルサプライチェーンが分断されつつある今、企業の競争力も再定義されています。
変化を機会と捉え、適応し、先んじて動く企業こそが、新時代の主役となるのかもしれません。
このように、世界貿易の再構築という大きなテーマの中で、オラクルやキャタピラーのような企業が注目されています。今後のポートフォリオ戦略を考える上で、こうした「構造的勝者」に目を向けてみるのも良いかもしれません。
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