米国株市場では、AI関連株の急騰が続く中で「バブルではないか?」という声も高まっています。2025年9月21日、米投資情報メディア「バロンズ(Barron’s)」は、こうした懸念に対し「むしろ逆の見方が必要」との分析を示しました。記事では、現在の市場は1990年代末のドットコムバブルとは本質的に異なると指摘されています。
今とドットコムバブルは何が違うのか
記事によると、1999年のテックバブルでは、多くの企業が実態のないまま上場し、売上すらない企業が株式市場で過熱的に取引されていました。当時は「株式分割」が頻繁に行われ、実態よりも熱狂が先行していた時代だったといいます。
一方で、現在のAI関連株ブームは「実際の売上・利益」に裏付けられている点が大きく異なるとバロンズは強調します。エヌビディア(NVDA)などの企業は、極めて高い利益成長と売上予想の上方修正によって株価が支えられており、単なる期待先行ではないとの見方が紹介されています。
オラクルの株価急騰が象徴する変化
オラクル(ORCL)は2025年9月9日に、AI関連クラウド事業の売上見通しを大幅に上方修正しました。これにより株価は1日で約40%も上昇し、注目を集めました。しかしこの動きも、バブル的な過熱というより「実体経済の変化に基づくもの」との評価です。
同社は今後4年間でクラウドインフラ売上が1,440億ドルに達するとの見通しを示しており、足元の180億ドルから大きく伸びる成長性が投資家に評価されています。
キャッシュフローと自社株買いが示す健全性
ブラックロックのリック・リーダー氏によれば、現在のテック企業は過去と異なり潤沢なキャッシュフローを確保しており、それを研究開発や設備投資に加え、自社株買いにも活用しています。これは、資金繰りに苦しみながら株価を維持しようとしていたドットコムバブル時代とは対照的です。
AIは「特定企業」ではなく「広範囲の業種」に波及
エバコアISIの分析によれば、AIブームの恩恵は特定のテック企業だけでなく、「AIを支える企業」「AIを活用する企業」にも広がっており、まるで“参加型民主主義”のような構造を持っていると述べられています。公開からわずか3年で、約4分の1の企業がAIを導入しはじめているというデータも紹介されています。
市場の健全性を示す“上昇銘柄の多さ”
記事では、ドットコムバブル末期には日々の下落銘柄数が上昇銘柄数を上回っていたというデータを挙げ、現在の市場ではその逆で「上昇銘柄が多く、インデックス全体を押し上げている」と分析されています。S&P500全体は一時大きく下落したものの、その後すぐに反発し過去最高値を更新している点も示唆的です。
今後注目すべきは“成長+割安”な企業
チャールズ・シュワブのリズ・アン・ソンダース氏は、現在の市場には一部「過熱感」もあるとしつつ、「だからこそ、中堅の割安成長株にチャンスがある」と述べています。注目ポイントとして、以下の指標が挙げられていました。
- ポジティブな利益修正
- サプライズ決算
- 低PBR(株価純資産倍率)
- 低PSR(株価売上高倍率)
- 高いフリーキャッシュフロー
つまり、AIというテーマに固執せず、市場全体を俯瞰しながらバランスの取れた投資戦略が必要ということです。
おわりに
この記事では、テックバブルの再来を懸念する声に対して「現状は過去とは違う」という視点を提供しており、AIを軸にした今の市場の構造や可能性に対する理解が深まる内容となっています。短期的な調整はあっても、長期的には成長余地が広がっているという見立てが印象的でした。
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