2025年7月29日、ペイパル・ホールディングス(PYPL)が発表した第2四半期決算は、6四半期連続となる利益成長を達成しました。調整後1株利益は1.40ドルで、ファクトセット調べによるアナリスト予想(1.30ドル)を上回りましたが、株価は一時8.6%近く下落しました。
売上総利益の拡大、ただしブランド取引の伸びは控えめ
ペイパルのトランザクション・マージン・ドル(取引利益総額)は前年比で7%増の38億ドルとなり、顧客残高に対する利息を除いたベースでは35億ドル(8%増)となりました。アクティブアカウント数と月間アクティブアカウント数はともに2%増加し、1アカウントあたりの取引数は4%増加しました(決済代行サービスを除く)。
一方で、ペイパルとVenmoを含むオンラインチェックアウトやタップ決済など、ブランド決済の総取引額(TPV)は8%増加しましたが、J.P.モルガンはブランドチェックアウトの成長率がわずか5%にとどまり、自社予想を下回ったと指摘しています。これが投資家の期待に届かなかった可能性があるとしています。
通期見通しを上方修正、着実な成長軌道
ペイパルは今回の好調な四半期業績を受け、通期のガイダンスを引き上げました。2025年のトランザクション・マージン・ドルは153.5億〜155億ドル(前年比5〜6%増)を見込み、従来の152億〜154億ドル(同4〜5%増)から引き上げられました。
また、調整後1株利益の見通しは5.15〜5.30ドルとし、従来の4.95〜5.10ドルから大幅に引き上げました。ファクトセット調べによる市場予想は5.11ドルであり、新たなガイダンスの下限をも下回っています。
ペイパルの広報担当者は、今年第1四半期を除けば「ビート・アンド・レイズ(予想超え&ガイダンス引き上げ)」の軌道を継続していると述べています。
CEOが語る成長戦略と新たな取り組み
2023年にCEOに就任したアレックス・クリス氏は、「我々は引き続き、戦略的取り組みによって利益ある成長を実現している」と述べました。さらに、米ドルに連動した独自のステーブルコインの導入などの革新により、グローバルでブランド体験を拡大していく意向を明らかにしています。
株価下落も強気姿勢は継続
株価は一時8.6%安の71.5ドルまで下落していますが、J.P.モルガンは依然として同社株に対して「オーバーウェイト(強気)」の評価を維持しています。最新の決算はおおむね期待を上回る内容であり、ブランド関連の弱さを補う健全な通期見通しが示されたと評価しています。
まとめ:堅調な決算でも期待のハードルは高く
今回の決算は、ペイパルにとって良好な内容だったにもかかわらず、市場はやや厳しい反応を示しました。これは、ブランド決済分野に対する期待がすでに高まっていたことや、株価に織り込まれていた可能性を示しています。しかし、通期ガイダンスの上方修正や新たな成長分野への取り組みからも、同社の戦略に対する信頼感は根強く残っていると言えそうです。
*過去記事はこちら ペイパル PYPL