米投資情報メディア「バロンズ」は2025年7月17日付の記事で、スキーリゾート大手ベイル・リゾーツ(MTN)について、今後の成長余地と株価の割安感から「投資妙味がある」とする見方を紹介しました。近年は業績の伸び悩みが続いていたものの、経営体制の立て直しと明確な成長戦略が進行中であり、高水準の配当利回りと将来的な株価上昇の両面から注目される存在となっています。
業績不振からの回復と注目の配当利回り
ベイル・リゾーツは全米・カナダを中心に42のスキー場を運営しています。パンデミック後の業績停滞やスキーヤー訪問数の減少などを背景に、株価は2021年のピークから半減しました。しかし、2025年度の純利益見通しは2億6400万ドルから2億9800万ドルの範囲で、前年比22%増と過去3年で最高水準を見込んでいます。
特筆すべきは、現在の株価水準で5.6%の高配当利回りが実現している点です。1株あたり四半期配当は2.22ドルで、年間3億3200万ドルの配当総額は、2025年の予想フリーキャッシュフロー4億7000万ドルを大きく上回ることなく賄えています。
エピックパスが支える安定収益モデル
同社の安定収益を支えているのが、通年リフト券である「Epic Pass(エピックパス)」です。2025年度の販売枚数は230万枚と、前年度比ではやや減少したものの、パンデミック前の2020年から倍増しており、着実な成長を示しています。このパスが同社のリフト収入の64%を占めており、安定した顧客基盤と継続的な価格調整が奏功しています。
コスト削減とマージン改善への取り組み
現在の課題は、利益率の改善です。2025年度のEBITDAマージンは28.4%と、2017〜2019年の平均31%、2022年の33.1%に届いていません。これに対処するため、同社は「リソース効率トランスフォーメーション計画」を導入し、2026年度末までに年間1億ドルのコスト削減を目指しています。これは今後のキャッシュフローや株主還元に直結すると見られています。
また、創業者で前CEOのロブ・カッツ氏が再びCEO職に復帰しており、同氏が進めたエピックパスの成功事例を踏まえて、今後の業務改革に期待が集まっています。
割安なバリュエーションとアナリストの強気予想
同社の現在のEV/EBITDA倍率は10.4倍と、過去10年間の平均17倍を大きく下回っており、割安感が際立っています。旅行・レジャー関連の競合他社であるロイヤル・カリビアンやウィン・リゾーツ、マリオットと比較しても、業界内でのポジショニングや事業の安定性を考慮すれば、より高い評価が正当化されるとの見方もあります。
米国みずほ証券のアナリストであるベン・チャイケン氏は目標株価を216ドル(現値比+36%)に設定しており、トゥルイスト証券のパトリック・ショルズ氏はストリート最高値となる244ドル(同+54%)の強気予想を提示しています。
配当を受け取りながら成長を待つ長期投資向け銘柄
業績回復とコスト改善、新たなCEO体制、そして割安な株価。こうした要素が揃った今、ベイル・リゾーツは中長期での株価上昇を期待できる銘柄として注目されます。短期的な株価上昇を狙うだけでなく、安定配当を享受しながら腰を据えて保有する「インカム+キャピタルゲイン」の両立を目指すポートフォリオに適しているといえそうです。