2025年6月末、メタ・プラットフォームズ(META)の株価が過去最高値を更新しました。6月最終営業日である30日の終値は738.09ドルとなり、2月14日の終値記録(736.67ドル)を上回りました。さらに日中の最高値は747.90ドルを記録。背景には、AI分野への本格的な人材投入と巨額投資があります。
AI人材獲得ラッシュ:オープンAIから計11名がメタに移籍
メタはここ数週間で、オープンAIの研究者を次々と引き抜いています。スイス・チューリッヒを拠点とする研究者を含む11名が、メタのスーパーインテリジェンスチームに加わったと報じられています。これらの人材は、軽量モデルやマルチモーダルAI、知覚認識といった先端分野での開発に携わってきた実績を持ちます。
いずれの研究者も中国の大学で学び、米国での研究活動を経てAI分野の第一線で活躍してきた人物とされ、メタのAI体制強化の中核を担う存在と目されています。
スーパーインテリジェンス・ラボを新設、スケールAIに巨額投資
メタは6月、AIスタートアップのスケールAIに143億ドルを出資し、同社株式の49%を取得しました。創業者アレクサンドル・ワン氏は新設された「Meta Superintelligence Labs」の共同責任者として就任。GitHub元CEOのナット・フリードマン氏と共にラボを率いる体制となります。
この新チームは、人間の能力を凌駕するAIの実現を目指すとされ、ザッカーバーグCEOは社内向けの説明で「AIの総力戦」を掲げています。
研究者への待遇:1億ドル超のオファーも報道
ブルームバーグやWiredによれば、ザッカーバーグ氏はトップクラスの研究者に対し、1億ドル規模の報酬パッケージを提示しているとされています。これに対し、オープンAIの最高研究責任者マーク・チェン氏は「家に泥棒が入ったような感覚だ」と社内メモで表現するなど、緊張感は高まっています。
一方、オープンAIでは過去数年で合計30億ドル分の株式が現金化され、社員の待遇改善も進められています。
AIインフラ整備に向けて290億ドル調達へ
ファイナンシャル・タイムズによれば、メタは米国内のデータセンター建設に向けて290億ドルの資金調達を計画中です。2025年の設備投資計画は最大720億ドルに達し、ザッカーバーグ氏は年内に2ギガワット規模のAI専用データセンターの稼働を目指しています。
AI競争の主戦場は「頭脳」へ
これまでAI開発はモデルの性能や演算能力の競争が中心でしたが、現在は「誰が最高の研究者を集められるか」が勝敗を分ける時代に移行しています。メタの積極的な採用戦略と資本投下は、オープンAIやマイクロソフト、アルファベットといった競合にとって大きな脅威となっています。
今後のスーパーインテリジェンス・プロジェクトの成果と、それがもたらすAI業界全体への波及効果に注目が集まります。
*過去記事「メタがオープンAI研究者を大量採用!AI覇権争いの最前線」