アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価が6月23日の米国市場の取引開始直後に2%以上上昇しました。これは、メリウス・リサーチのアナリストであるベン・ライツェス氏が同社の株式評価を「中立」から「買い」に引き上げたことがきっかけです。
ライツェス氏は、AMDがAIチップ市場において持続的な地位を確保できる可能性があると指摘しています。新たな目標株価は従来の110ドルから175ドルに引き上げられました。
AIプロセッサへの期待と株価の動き
ライツェス氏は、「年初から状況は多くの面で改善しており、もしこの見立てが正しければ、株価にはさらなる上昇余地がある」と述べています。
その後下落しましたが、AMDの株価は2.8%上昇し、131.80ドルを記録しました。過去1か月での上昇率は16%に達し、新たに発表されたAIプロセッサへの期待がその背景にあります。
Instinct MI350シリーズで性能を大幅向上
今月初め、AMDは最新のAIチップ「Instinct MI350」シリーズ(MI350XおよびMI355X)を発表しました。旧モデルであるMI300Xと比較して、最大4倍の性能向上を実現するとされています。
この新型チップにより、同社はAIアクセラレーター市場の5%のシェアを獲得する可能性があります。ライツェス氏は、これにより2028年にはGPU売上が200億ドルを超える可能性があると予測しており、1株当たり利益(EPS)も9ドル以上になると見込んでいます。
推論市場でのエヌビディアとの競争
エヌビディア(NVDA)は、AIチップ市場で約90%のシェアを持つと一般的に評価されています。これまでの強みはAIモデルの「学習」プロセスにありましたが、今後「推論」分野へのシフトが起きれば、AMDにも成長機会があると考えられています。
ジェフリーズの分析によると、現行のAMD製GPUは、推論性能においてエヌビディアの「Hopper」世代には及ばないものの、MI350ではMI300と比べて35倍の推論性能を達成する計画です。
ライツェス氏は、同社のROCmソフトウェアの改善、メモリ帯域幅の拡張、大容量メモリといった技術面でも評価できると述べています。
中東でのパートナーシップが成長の鍵に
AMDは、サウジアラビアのHumain社との提携により、今後5年間で500メガワットのAIコンピューティング能力を展開する予定です。
ライツェス氏は「中東におけるAMDのシェアは、世界平均を上回る可能性がある」と指摘しています。Humain社は2030年までに1.9ギガワット、2034年までに6ギガワットの構築を計画しており、アラブ首長国連邦でも現在1GWの開発が進行中です。
同氏は「1ギガワットの設備ごとに、数十億ドル規模の市場機会が存在する」と見積もっています。
今後の売上予測を上方修正
ライツェス氏は、2025年のGPU売上予測を従来の60億ドルから66億ドルに上方修正しました。さらに2026年は97億ドル、2027年には131億ドルと予想しており、これらも以前の84億ドル、105億ドルという予測から引き上げられています。
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