アイデンティティ管理ソフトウェアを提供するオクタ(OKTA)の株価は、2025年5月28日の取引で一時前日比14.13%下落し、107.77ドルとなりました。これは、同社が発表した2026会計年度第1四半期の好調な決算にもかかわらず、経済の不確実性を理由に通期ガイダンスを据え置いたことが投資家の懸念を招いたためです。
2026会計年度第1四半期の業績概要
オクタは、2026会計年度第1四半期において以下の業績を報告しました:
- 売上高:6億8,800万ドル(前年同期比12%増)
- 調整後1株当たり利益(EPS):0.86ドル(前年同期比32%増)
- サブスクリプション売上高:6億7,300万ドル(前年同期比12%増)
- 現在の残存業績義務(cRPO):22億2,700万ドル(前年同期比14%増)
- フリーキャッシュフロー:2億3,800万ドル
これらの数値は、アナリスト予想を上回るものであり、同社のビジネスが堅調に推移していることを示しています。
保守的なガイダンスと市場の反応
しかしながら、同社は2026会計年度通期の売上高予想を28億5,000万ドル〜28億6,000万ドル、調整後EPSを3.23ドル〜3.28ドルと据え置きました。この保守的なガイダンスは、経済の不確実性を考慮したものであり、CFOのブレット・タイグ氏は「顧客との会話や市場の雰囲気から慎重な姿勢を取る必要があると感じている」と述べています。
このような慎重な見通しが投資家の不安を招き、株価の急落につながりました。特に、現在の残存業績義務(cRPO)が前四半期比でわずかに減少したことが、将来の成長鈍化への懸念を強めています。
アナリストの評価と今後の見通し
アナリストの間では意見が分かれています。D.A.デビッドソンやキーバンクのアナリストは、同社のガイダンスは保守的すぎると指摘し、株価の回復余地があると見ています。一方、ジェフリーズのアナリストは、短期的な収益の伸び悩みを懸念し、中立的な評価を維持しています。
ファクトセットによると、オクタをカバーする47人のアナリストのうち57%が「買い」または同等の評価を付けており、S&P 500企業の平均である55%を上回っています。
投資家への示唆
オクタは、アイデンティティセキュリティ分野でのリーダーシップを維持しており、AIやクラウドセキュリティへの対応も進めています。しかし、経済の不確実性や短期的な成長鈍化の可能性を考慮すると、投資家は慎重な姿勢を取る必要があります。長期的な視点での投資を検討する際には、同社の技術革新や市場でのポジショニングを注視することが重要です。
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