アメリカの通信大手AT&T(T)は、ルーメン・テクノロジーズ(LUMN)の家庭向け光ファイバーブロードバンドネットワークの大部分を、約57億5,000万ドルの現金取引で買収することに合意しました。この取引は2026年上半期の完了を予定しており、規制当局の承認を待っています。
この買収対象には、住宅と小規模ビジネスの約100万件の光ファイバー契約者と、11州で展開される400万以上の光ファイバー接続ポイントが含まれています。契約完了後、これらの契約者は段階的にAT&Tのサービスへ移行していく予定です。
なお、ルーメンの法人向け光ファイバー顧客や、銅線ベースの顧客は本取引の対象外となっています。
全米で光ファイバー接続を加速、主要都市でもサービス拡大へ
AT&Tの最高経営責任者(CEO)ジョン・スタンキー氏は、「アメリカのより多くの地域へ最高の接続性を持つ光ファイバーブロードバンドを届ける競争の中で、当社は先頭を走っている」と述べています。
この取引によって、デンバー、ラスベガス、ミネアポリス・セントポール、オーランド、フェニックス、ポートランド、ソルトレイクシティ、シアトルといった主要都市を含む11州で、通信インフラの整備と地域経済の活性化が見込まれています。
AT&Tファイバーの顧客数拡大と将来の成長戦略
今回の買収により、AT&Tは光ファイバーサービスの顧客基盤を大幅に拡大し、既存の25%の加入率を将来的に40%近くまで引き上げることを目指しています。
また、2030年までにAT&Tの光ファイバーサービス提供エリアを倍増させ、全米で約6,000万の接続ポイントを実現する計画も発表されました。これにより、より多くの地域で高速かつ安定したインターネット環境の提供が可能になります。
財務計画と株主還元の方針を再確認
AT&Tは、2025年通年の財務および業績見通し、ならびに2024年の投資家向け説明会で発表した自社株買いの計画を改めて表明しました。
同社は、すでに発表済みの100億ドル規模の自社株買いプログラムの下、2025年末までに30億ドル以上の普通株を買い戻し、残りを2026年に実施する予定です。
通信業界で活発化するM&A、ベライゾンも動く
今回のAT&Tの買収は、光ファイバー通信網の整備を巡る業界の競争が激化する中での動きといえます。先週にはベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)も、フロンティア・コミュニケーションズを約200億ドルで買収する取引が連邦通信委員会(FCC)に承認されました。
株式市場の反応と今後の注目点
2025年5月21日時点で、AT&Tの株価は年初から20.5%上昇しており、S&P500指数が同期間で0.6%下落しているのとは対照的な動きを見せています。今回の買収発表が投資家から好意的に受け止められていることがうかがえます。
米国通信市場では今後もM&Aが加速する可能性が高く、光ファイバーインフラを巡る戦略の動向に注目が集まります。