AI覇権争いで足踏み…メタ・プラットフォームズの「Llama 4」再遅延が示す現実

ウォール・ストリート・ジャーナルが5月15日に報じたところによると、メタ・プラットフォームズ(META)の最も野心的なAI言語モデル「Llama 4 Behemoth」のリリースが再び延期されることが明らかになりました。このニュースを受け、同社の株価は15日の米国市場で2.4%下落しました。

この遅延はメタだけでなく、オープンAIやアンソロピックも同様に直面している課題です。

AI開発の進化スピードは減速、過去の期待にブレーキ

オープンAIは2022年11月にChatGPT 3.5を公開し、その驚異的な性能でAIブームを巻き起こしました。数ヶ月後にはさらに進化したGPT-4が登場し、その急速な進歩に市場は沸き立ちました。

しかし、その後2年が経過してもGPT-5は登場していません。アンソロピックも2024年6月に新たなClaudeモデル「Opus」を発表しましたが、こちらも開発は遅れています。

メタが手がけるBehemothは、これまで同社が開発してきた中で最大規模となる予定ですが、オープンAIやアンソロピックと同様の技術的な壁に直面しているようです。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、社内では「前バージョンに対する改善点が一般公開に値するほどか」という疑問が出ているとのことです。

「推論型」AIが注目されるが、コストと速度に課題

新たな大型言語モデルの開発が難航する中、AI開発企業は別のアプローチで性能向上を図っています。オープンAIのo3やディープシークのr1など、「推論型」と呼ばれるモデルが登場し、内部でステップ・バイ・ステップの自己対話を行うことで問題解決能力を高めています。

しかし、この手法は非常に時間がかかります。例えば、オープンAIのo3に「メタがAIデータセンターにいくら投資しているか、Llama 4 Behemothの事前学習にかかるコストはどの程度か」と質問すると、約4分間も自己対話を続けた後にようやく1000字近い回答を出すといった具合です。

この「思考時間」はコストにも直結し、o3はオープンAIが提供する非推論型モデルと比べて5倍の費用がかかるとされています。

メタの巨額投資と投資家の不安

新たな大型モデルに対する期待が高まる一方で、メタが投じる資金も膨大です。2025年第1四半期には140億ドルもの設備投資を行い、残り9か月でさらに500億〜580億ドルをAIデータセンターに投じる計画を発表しています。

こうした巨額投資は研究開発費にも表れており、第1四半期のR&Dコストは前年比で22%増加しています。投資家の間では、これほどの投資がいつ収益に結びつくのかに対する懸念が強まっています。

同社の収益の98%は広告事業から来ており、AIの収益化も広告が主な手段になると見込まれています。しかし、直近の見通しとしては「すぐに収益化される段階ではなく、まずは優れた消費者体験の構築に注力している」と、最高財務責任者のスーザン・リー氏は語っています。

ザッカーバーグCEOはAI投資のリターンに自信を示す

メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、AI投資について複数の収益化手段を模索しており、「すべての分野で成功する必要はないが、一部でも成功すれば投資に対する満足度は非常に高い」と語っています。

5月16日午前の米国市場で同社の株価はさらに1.4%下落しており、市場は慎重な姿勢を崩していません。

*過去記事 メタ・プラットフォームズ

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