再び始まるトランプ流関税政策が米国株に与える深刻な影響とは?

  • 2025年3月31日
  • 2025年3月31日
  • BS余話

2025年3月末現在、トランプ政権は再び関税政策を前面に打ち出しており、経済や市場に新たな緊張感が生まれています。米国の投資情報誌バロンズが報じたように、この政策変更は企業活動や消費者心理に幅広い影響を及ぼしており、単なる貿易政策にとどまらず、景気全体の不確実性を高める要因となっています。

企業の在庫戦略と関税先取り需要のゆがみ

企業は関税によるコスト増を回避するため、対象品目の輸入を前倒しで進めており、産業用資材や消費財の輸入量が急増しています。これは、米商務省が発表している直近の貿易統計にも表れており、関税発動前の「駆け込み輸入」が明確に数字に現れています。こうした動きが短期的な売上に貢献する一方、在庫の過剰積み増しによって後に評価損や廃棄コストを抱えるリスクも高まっています。

専門家の分析によれば、こうした在庫戦略は2020年から2021年のパンデミック期に見られた「サプライチェーン不安」に近い動きであり、企業の財務計画に大きなゆがみを生む可能性があるとのことです。

USMCA対象品の混乱と制度的な曖昧さ

一部の品目、特に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で対象とされる繊維や衣料品については、関税が一時的に除外されていますが、現場では何が対象で何が対象外なのかの明確なルールが不足しているため、物流に混乱が発生しています。これはバロンズが指摘するように、制度の運用面での課題が企業活動に直接的な影響を及ぼしている好例です。

特に中小企業にとっては、こうした法的な曖昧さが過剰在庫や出荷遅延を引き起こし、キャッシュフローの圧迫要因となる懸念があります。

消費者と観光業の反応:ボイコットと旅行需要の減退

トランプ政権の関税強化に対し、カナダではアメリカ製品の不買運動が広がっているとされます。これにより、米加間の旅行需要も大幅に低下しています。OAG Aviation Worldwideによると、2025年9月までの米加間の旅行予約件数は前年同期比で70%以上の減少となっており、観光産業への波及も無視できません。

これは単なる関税の影響にとどまらず、消費者心理が「政治的行動」にシフトしていることを示しており、経済の需給バランスに新たな歪みをもたらしています。

投資と雇用に広がる不安:スタグフレーションの可能性

製造業においては、全米製造業協会(NAM)の2025年2月の調査で、76%の企業が「貿易政策の不透明さ」を最大の懸念に挙げており、第3四半期から40ポイントの上昇という異例の動きを示しました。

バロンズでは、エコノミストの見解として、「関税の不確実性が投資や生産、雇用を抑制しており、本来の目的である国内産業の強化とは逆行している」との指摘が紹介されています。特にインフレと景気停滞が同時に進行する「スタグフレーション」への懸念が高まっており、金融政策との整合性も問われる局面です。

関税と通貨政策の連動:人民元安がもたらす新たな火種

現在、アメリカが中国からの輸入品にかけている平均関税は35%と、過去の米中貿易戦争期を上回る水準にあります。こうした状況下で、中国が人民元の為替レートを引き下げ、輸出競争力を確保しようとする可能性も取り沙汰されています。

キャピタル・エコノミクスの予測によると、中国の2025年のGDP成長率は4%にとどまると見込まれていますが、さらに関税圧力が強まればこの予測も下方修正される可能性があります。為替政策が米中間の摩擦を再燃させる引き金となる恐れもあり、投資家はこの点にも注意を払う必要があります。

まとめ:政策の行方と市場の見極めがカギ

最近のバロンズ記事を通じて浮かび上がるのは、関税という一つの政策が、供給網、企業行動、消費者心理、さらには通貨市場にまで多層的な影響を与えているという事実です。2025年の投資判断においては、単なる短期的な株価の反応にとどまらず、中長期的に経済構造そのものに与える影響を冷静に見極める必要があると感じます。

今後もトランプ政権の動向と市場の反応を注視し、変化に柔軟に対応できるポートフォリオ戦略が求められます。

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