2025年の第一四半期も終わりを迎えようとしている現在、株式市場は前年までの楽観的なトーンから一転し、不透明感が広がっています。S&P500指数は、2月中旬に史上最高値を記録したものの、その後すぐに調整局面に入りました。ダウ・ジョーンズ・マーケッツ・データによると、年初来の下落率は4.9%に達しており、これは2022年以来で最も厳しいスタートです。
このような市場環境下で、投資家の関心が再び高まっているのが「ディフェンシブ株」です。景気変動の影響を受けにくい業種として知られるエネルギー、ヘルスケア、公益事業の各セクターが堅調なパフォーマンスを示しており、ポートフォリオの安定性を求める動きが強まっています。
市場の下落局面で相対的に強さを見せるセクター
S&P500の11セクターのうち、2025年に入って7セクターがプラス圏を維持しています。中でもエネルギーセクターが約8%上昇、次いでヘルスケアが5%、公益事業は約3%の上昇となっており、相場全体が軟調な中で逆行高を演じています(出典:ダウ・ジョーンズ・マーケッツ・データ)。
たとえば、米国を代表するエネルギー大手であるエクソンモービル(XOM)やシェブロン(CVX)は、それぞれ9.5%および15%の株価上昇を記録しています。また、ヘルスケアの分野ではイーライ・リリー(LLY)やユナイテッドヘルス・グループ(UNH)が堅調な推移を見せています。
こうした企業の共通点は、安定したキャッシュフローを生み出すビジネスモデルに加え、インフレや金利上昇といった外部環境の変化に対する耐性が高い点にあります。特に公益事業や医薬品は、需要の変動が小さく、景気後退時にも一定の売上を維持できるため、防御的な投資対象として位置付けられています。
株価バリュエーションとセクター分散の再考
一方で、テクノロジーや通信セクターは、年初来でそれぞれ14%、6%の下落となっており、過去数年の成長を支えてきた銘柄群が足を引っ張る形となっています。S&P500全体に占めるこれらのセクターの時価総額の割合は約40%と非常に大きく、インデックスのパフォーマンスにも直結します。
この構造的な偏りが、リスク分散の観点から再検討され始めています。バンク・オブ・アメリカによれば、S&P500は最高値から約7%下落し、2025年の企業売上見通しにも下方修正が入っているにもかかわらず、依然としてバリュエーション面では割高感が残っているとの分析を示しています。同社が活用している価格純資産倍率(P/B)および営業キャッシュフロー倍率(P/OCF)に基づくモデルでは、テクノロジーが著しく割高であるのに対し、エネルギー、ヘルスケア、公益事業といったセクターは相対的に割安とされています。
この点からも、現局面においてはセクター分散の再評価が不可欠であり、割安かつ安定成長が見込めるディフェンシブ株への戦略的なシフトは理にかなっていると考えられます。
経済指標と企業業績の鈍化がもたらす影響
今後数カ月にわたって、経済データの動向が市場に与える影響はさらに大きくなると見られています。ウォルフ・リサーチのストラテジストは、非農業部門雇用者数が減速すれば、投資家がFRBの政策対応の遅れを懸念し、株式市場全体にネガティブなセンチメントが広がる可能性を指摘しています。こうした環境では、ディフェンシブ株がより魅力的な選択肢となります。
また、センチメント・トレーダーのリサーチでは、シティグループが発表する「米国売上修正指数」が14週連続で低下しており、これは企業業績の下方修正が広がっているサインとされています。このような局面では、景気に敏感なサイクル型セクターは下落しやすく、代わりにディフェンシブセクターが市場全体をアウトパフォームする傾向が過去にも見られました。
まとめ:不確実性の時代こそ、ディフェンシブ株に注目を
2025年に入り、市場は地政学リスクや景気減速懸念、さらにはトランプ大統領の貿易政策の影響など、複数の不透明要因にさらされています。こうした環境下で、短期的なリターンを狙うだけでなく、資産の防衛を重視する姿勢がこれまで以上に重要になっています。
エネルギー、ヘルスケア、公益事業といったディフェンシブセクターは、相対的な株価の安定性に加え、割安感や継続的なキャッシュフローという投資魅力を備えており、今後の市場局面でも有力な選択肢となる可能性があります。
引き続き、セクターごとのファンダメンタルズやマクロ経済指標の動向を注視しながら、ポートフォリオのリスクとリターンの最適化を図っていくことが求められます。