アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は2月4日、2024年第4四半期の決算を発表し、売上全体では市場予想を上回る結果となりました。しかし、データセンター部門の売上がアナリスト予想に届かず、人工知能(AI)コンピューティング市場においてエヌビディア(NVDA)との差が依然として大きいことが明らかになりました。
この決算発表を受け、AMDの株価は4日のアフターマーケットで一時10%近く下落しました。2025年に入ってからのAMD株は、すでに1.1%下落しており、市場全体のセンチメントに影響を与えています。
データセンター部門の売上が予想を下回る
AMDのデータセンター部門の売上は、前年同期比69%増の38億6000万ドルとなりました。しかし、アナリストの事前予想である40億9000万ドルには届きませんでした。この結果は、AMDのAI関連製品が市場で十分な競争力を持っていないのではないかとの懸念を強める要因となっています。
特に、エヌビディアがこの分野で圧倒的なシェアを持っていることも影響しています。現在、AMDのアクセラレーター・チップの売上は年間50億ドル以上ですが、エヌビディアはこの分野で年間1000億ドルを超える売上を記録しています。この大きな差を埋めるために、AMDは世界中の大企業に対し、自社のAI製品をデータセンターの拡張計画に組み込むよう説得を続けています。
全体の売上は堅調も、ゲーム部門は低迷
AMDの2024年第4四半期の総売上は76億6000万ドルとなり、アナリスト予想の75億4000万ドルを上回りました。前年比では24%の増加となっています。また、1株当たりの利益は特定の項目を除いた調整後で1.09ドルとなり、市場予想と一致しました。
一方で、ゲーム部門の売上は大幅に減少しました。AMDはマイクロソフトやソニーグループ向けにカスタム・プロセッサを供給していますが、現行世代のゲーム機のライフサイクルが終わりに近づいているため、売上が低迷しています。第4四半期のゲーム部門の売上は、前年同期比59%減の5億6300万ドルとなりました。
PCチップ部門では市場シェアを拡大
AMDは、パソコンやサーバー向けのチップ市場でインテル(INTC)から市場シェアを獲得することに成功しました。特に、PCチップ部門の売上は23億ドルとなり、アナリスト予想の19億9000万ドルを上回りました。この分野は堅調に推移しているものの、AI市場ほどの急成長は見込めないと考えられています。
AI市場の競争激化、中国の新興企業が台頭
最近、中国の新興企業であるディープシークが、米国の大企業が開発するAIモデルと同等の性能を持つ技術を、はるかに低コストで実現したと発表しました。このニュースを受けて、AMDやエヌビディアを含むAI関連企業の株価は下落しました。AI市場におけるコスト競争が激化し、高額なハードウェア投資が不要になる可能性があるとの見方が広がっているためです。
2025年に向けたAMDの展望
AMDは2025年第1四半期の売上を68億ドル〜74億ドルと予想しています。アナリストの平均予想は70億4000万ドルであり、堅調な見通しを示しているものの、市場はデータセンター部門の成長鈍化を懸念しています。
AI市場の拡大に伴い、AMDがエヌビディアとの競争をどこまで追い上げられるかが今後の焦点となります。また、ゲーム部門の売上回復が期待しづらい中、PCチップやデータセンター向け製品の成長が業績を支えることになりそうです。
AMDは引き続き、AIアクセラレーター・チップやデータセンター向け製品の開発を強化し、エヌビディアとの差を縮めることを目指しています。今後の決算発表や、新たな技術革新の動向に注目が集まります。
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