米国投資専門誌「バロンズ(Barron’s)」は1月30日、「Top Picks(注目銘柄)」として、コネクターメーカー大手アンフェノール(APH)を推奨しました。この記事では、AIブームによる成長が同社の業績にどのような影響を与えているのか、また現在の株価下落が買いのチャンスとなるのかについて詳しく解説されています。
本記事では、バロンズの分析をもとに、アンフェノールの魅力や投資判断について紹介していきます。
アンフェノールとは?安定した成長を続ける企業
アンフェノールは、自動車、航空機、携帯電話、そしてAIを支えるデータセンターで使用される電気・データ用のケーブル、センサー、各種コネクターを製造する世界的企業です。近年、AI向けデータセンターの拡大が続いており、同社はその恩恵を受けて成長を続けています。
バロンズによると、アンフェノールは過去5年間で年間22%のトータルリターンを記録し、S&P500種株価指数の15%を大きく上回るパフォーマンスを見せています。これまでの安定した業績に加え、今後も成長が見込める銘柄として注目されています。
株価が13%急落 今が買いのチャンスか?
1月下旬、アンフェノールの株価は13%急落しました。これは、中国のAI企業ディープシークの出現により、AI関連の大型言語モデル(LLM)が従来のデータセンターほどのコンピューティングパワーを必要としない可能性があるとの懸念が影響したためです。
しかし、バロンズはこの下落を「買いのチャンス」と評価しています。第4四半期の決算では、売上と利益が市場予想を大きく上回り、同社の業績は極めて好調であることが示されました。事実、アンフェノールは2010年以来減益を記録したことがなく、過去5年間で四半期業績予想を下回ったのはわずか2回だけという驚異的な安定性を誇ります。
カタリスト・ダイナミック・アルファ・ファンドのポートフォリオ・マネージャー、ルーク・オニール氏は「15%のプルバックでアンフェノールを買うのは決して悪いエントリーポイントではない」と述べ、同社株の魅力を強調しています。
データセンター需要の拡大とAI関連売上の成長
アンフェノールは、エヌビディア(NVDA)のGPU向け接続製品を提供しており、AI導入の加速とともに売上が急成長しています。TDカウエンのアナリストであるジョー・ジョルダーノ氏は、2025年には同社のAI関連売上が10億ドルを超えると予測しています。
さらに、同社の事業はAIだけでなく、通信ソリューション、相互接続・センサーシステム、過酷環境ソリューションの3つの主要分野に分かれ、2024年にはいずれも成長を遂げました。バロンズは、アンフェノールが多角的な事業展開によって成長の安定性を維持している点を評価しています。
買収戦略と財務基盤の強さ
アンフェノールは、M&A(企業買収)を成長戦略の柱としています。2024年7月にはCommScope Holdingのモバイルネットワーク事業を買収し、年間売上を10億ドル以上増やす予定です。
また、財務基盤の強さも同社の魅力の一つです。同社は年間20億ドル以上のフリーキャッシュフローを生み出し、33億ドルの現金を保有しています。さらに、負債も約3年のキャッシュフローで返済可能であり、積極的な買収戦略を継続する余力があるとバロンズは指摘しています。
トゥルイスト証券のアナリスト、ウィリアム・スタイン氏は、同社の目標株価を102ドルに設定しており、1月31日時点の株価(70.78ドル)から44%の上昇余地があると予測しています。
EV市場の回復とアンフェノールへの影響
アンフェノールは、EV(電気自動車)市場にも関与しています。EVは従来の自動車よりも1台当たりに多くのコネクターを必要とするため、EV市場の成長は同社の売上拡大につながります。
近年、EV市場は高金利の影響で成長が鈍化していましたが、バーティカル・リサーチ・パートナーズによると、アンフェノールの自動車1台当たりの売上は過去7年間で毎年約17%増加しています。EV市場が回復に向かえば、アンフェノールの売上もさらに伸びる可能性があります。
スピア・アドバイザーズのイヴァナ・デレフスカCIOは、「EV市場が回復すれば、アンフェノールにとって非常に大きな意味を持つ」とコメントしています。
今後の成長予測と投資判断
ファクトセットのデータによると、アンフェノールの売上は2024年の152億ドルから、毎年約13%増加して、2026年には195億ドルに達すると予測されています。また、粗利益率も2025年の22.2%から2026年には23%へと拡大する見込みです。
バロンズは、買収を進めながら自社株買いも実施する財務戦略を評価しており、2024年第3四半期には年間7億ドル以上の自社株買いを実施したことを報じています。
まとめ:アンフェノール株は買いか?
バロンズの記事では、短期的な株価下落を買いのチャンスと捉え、アンフェノールの長期的な成長性を評価しています。現在の株価は12ヶ月先の予想利益の30倍とS&P500平均(21.9倍)を上回っていますが、同社の安定した成長率を考慮すれば、割高とは言えないとの見解が示されています。
TDカウエンのジョルダーノ氏は、「バリュエーションについて議論することは可能だが、成長率が2桁の水準にある限り、株価は支持されるだろう」とコメントしており、今後の株価上昇に期待が持てます。
アンフェノールは、成長の安定性・M&A戦略・強固な財務基盤を持つ優良銘柄であり、バロンズの「Top Picks」に選ばれた理由も納得できる内容でした。今後の投資判断において、注目すべき銘柄の一つと言えそうです。