PC業界はコロナ禍からの回復が進まず、依然として厳しい状況に直面しています。この傾向は、HP(HPQ)やデル・テクノロジーズ(DELL)の最新の決算報告書からも明らかです。
11月27日の取引終了時点で、HPとデルの株価はともに11%以上下落しました。特にHPにおいて、PC事業は全体の大部分を占めており、業績に大きく影響しています。一方、デルもPCの売上不振により、ウォール街の期待を裏切りました。
PC販売台数の推移と現状
在宅勤務や在宅学習の増加を受け、2020年から2021年にかけてPC販売台数は急増しました。この期間、約3億4000万台のPCが市場に投入され、パンデミック以前と比較して29%の増加を記録しました。しかし、その後の市場は低迷が続いています。
2023年のPC販売台数は、2021年と比較して27%減少し、パンデミック前の水準を6%下回っています。2024年第3四半期の販売台数も前年と横ばいの状態です。
回復への期待と課題
多くのアナリストは、2024年後半にPC市場の回復が始まると予測していました。その理由として、以下の3つの要因が挙げられています。
- 買い替え需要の増加
2020年および2021年に販売されたPCが、買い替えの時期を迎えている可能性があります。 - Windows 10のサポート終了
マイクロソフト(MSFT)は2025年にWindows 10の無料サポートを終了する予定であり、新しいPCの購入を促す要因になると見られています。 - AI PCの台頭
AIタスクを実行できる新しいPCの登場により、さらなる買い替え需要が見込まれています。
しかし、これらの要因は現時点では十分な影響を及ぼしていません。HPの売上報告によると、PC販売台数は直近四半期でわずか1%の増加にとどまり、デルでは販売台数が2%減少しています。
PC市場の課題
PC買い替えサイクルの延長が市場低迷の一因とされています。ガートナーの調査によると、多くの消費者や企業がPCの買い替えサイクルを5年〜6年以上に延ばしており、2020年や2021年に購入されたPCがまだ使用可能であることが影響しています。
さらに、Windows 10のサポート終了が2025年10月に予定されているため、購入を検討する時間的猶予が存在します。一部の企業は、セキュリティサポートを延長するオプションを選択する可能性が高く、新規PC購入を先送りしている状況です。
AI PCの可能性
AI PC市場は成長を見せており、HPによると、AI PCは市場投入後最初の四半期で販売台数の15%を占めました。ただし、これらは新規需要よりも既存PCの買い替え需要が主な原動力とされています。その結果、AI PCの登場が市場全体を大きく押し上げるには至っていません。
2025年への期待
HPは2025年にPC市場の回復が本格化すると見込んでいます。エンリケ・ロレスCEOは、「Windowsのリフレッシュが緩やかなペースで進行しているため、2025年には大きな機会が生まれる可能性があります」と述べています。ただし、同社は2025年のPC成長率を一桁台半ばと予測しており、大幅な成長は見込みにくい状況です。
まとめ
PC市場はパンデミック期の急成長から一転、現在は厳しい環境が続いています。買い替え需要やAI PCの普及、Windows 10サポート終了といった成長要因があるものの、それらが市場に与える影響はまだ限定的です。市場全体の本格的な回復には、少なくとも2025年までの時間を要する見通しです。
*過去記事 デル・テクノロジーズ DELL