スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)は間もなく上場廃止となる可能性がありますが、もう一つのAIデータセンター関連銘柄であるTSS(TSSI)は、ナスダックへの新規上場を果たしたばかりです。
TSSとは?デルとの強固なパートナーシップ
TSSは、データセンター用のシステムを構築するシステムインテグレーターであり、特にデル・テクノロジーズ(DELL)との関係が深いことで知られています。同社の本社は、デルの本社(テキサス州ラウンドロック)からわずか8キロメートルの距離に位置しており、地理的な近さはもちろん、事業面での強固なつながりがあります。
- 売上の96%をデルが占める:2023年の売上のほとんどがデルとの取引によるもの。
- デルの急成長するサーバー部門:デルのデータセンター部門は直近四半期で売上が38%増加。一方でPC部門は4%縮小。
デルのデータセンター事業の成功により、TSSはその成長の恩恵を受けています。
ナスダック上場と株価の急騰
11月13日、TSSは店頭取引から ナスダック・キャピタル・マーケット に移行しました。このニュースを受け、TSSの株価は22%急騰。昨年末の0.27ドルから、直近では12ドル近くまで上昇しています。
さらに、投資家の間では ラッセル2000指数 への組み入れ期待も高まっています。
成長を裏付ける売上高と資本支出の増加
TSSの売上高は直近4四半期で5倍に成長。デルのデータセンター需要増に支えられ、同社は今後も安定的な収益を見込めます。
- 売掛金管理の工夫:TSSは2023年に1億3700万ドルの債権を金融機関に売却。デルが提供する約6%の低金利でキャッシュフローを平準化。
- 資本支出の拡大:TSSは増加する電力需要に対応するため新施設に移転し、従業員数を2倍以上に増加。
投資家が考慮すべきリスク
TSSの最大のリスクは、売上のほぼ全てを依存する デルへの極端な集中リスク です。
- デルが取引を打ち切るリスク:過去には関係性に亀裂が生じたこともあり、新経営陣の下で関係が修復された経緯があります。TSSの有価証券報告書では、デルとの取引終了が「売上に大幅な悪影響を及ぼす」と明言されています。
- 競争環境の変化:デル以外の戦略的パートナーシップを追求するには、デルの許可が必要な可能性がある点が成長の制約となるかもしれません。
AIデータセンター関連銘柄としての魅力
デルの急成長するサーバー部門を背景に、TSSはAI関連銘柄として注目されています。特に、以下の点が魅力的です:
- 高成長のビジネスモデル:売上高の急拡大が続いており、デルとのパートナーシップでさらなる売上増が期待されています。
- AI需要の恩恵:データセンター需要が増加する中、TSSはその重要なプレイヤーとして位置付けられています。
- 第二の大口顧客獲得の可能性:デル以外の顧客を確保できれば、成長がさらに加速します。
まとめ:TSSは「大きな可能性」と「大きなリスク」を抱える銘柄
TSSは、小型株ながらもAI関連分野での高い成長率とナスダック上場という追い風を受けています。一方で、デルへの過度な依存や競争環境の変化がリスクとなる点は見逃せません。
投資家は、デルとの関係性を注視しつつ、同社のビジネス拡大の可能性を評価する必要があります。リスクとリターンを慎重に見極めることで、TSSへの投資がポートフォリオの価値を高める可能性があります。