今年の米国市場で公益事業株が驚くべき成長を遂げています。公益企業であるビストラ(VST)の株価は2024年に入り245%以上の上昇を記録し、S&P 500のトップパフォーマーとなりました。この驚異的な成績は、エヌビディア(NVDA)のようなAI関連企業に投資する投資家が注目すべき新たな動きです。
しかし、この急騰が続くのか、投資家にとって気になるポイントです。特に、AIがもたらす電力需要の増加により、公益事業企業がどのような恩恵を受けるのかが焦点となっています。
AI革命と公益事業の関連性
エヌビディアの株価は、AIブームに乗り、今年だけで150%近く上昇していますが、企業がAIサービスを提供するためには、膨大な電力が必要です。このエネルギーを供給する重要な役割を担っているのが、ビストラのような公益事業企業です。
特に、原子力エネルギーを提供するビストラは、AIの成長とともにその価値を大きく高めています。同様に、公益株であるコンステレーション・エナジー(CEG)も大きな成長を遂げており、S&P 500で3番目のパフォーマンスを見せています。コンステレーションの株価は135%以上の上昇を記録しています。
公益事業セクターの過熱に対する警告
このように公益事業セクター全体が今年急騰していますが、投資家には慎重さが求められています。SentimenTraderの上級リサーチアナリストであるディーン・クリスチャンズ氏は、「公益事業セクターは上昇しすぎており、重大な岐路に立っている」と警告しています。
現在、公益事業ETFは来年の売上予想の約19倍の株価収益率で取引されており、これは過去5年間の平均をわずかに上回る水準です。特に、コンステレーション・エナジーの株価収益率は2025年の予想で30倍を超えており、これは過去数年で最も高い水準です。
FRBの政策と公益事業株の今後
公益事業株の急騰がFRBの政策転換やAIによるエネルギー需要の増加によるものなのか、確かな答えはありません。しかし、投資家は、このセクターが短期的には調整に入る可能性があることを考慮すべきです。多くの指標がこのセクターの過熱を示している中で、特に短期および中期的には下落のリスクが高まっています。
公益事業株の魅力とリスク
ウォール街のアナリストたちも、このセクターの熱狂がやや冷めることを予想しています。ファクトセットによる調査では、公益事業ETFの個別銘柄の今後12ヶ月間の目標価格の中央値は、9月下旬の水準をわずか3.2%上回るとされています。これは、S&P 500の11セクターの中で最も低い増加率です。
しかし、割高感が少ない伝統的な公益事業株も存在します。例えば、デューク・エナジー(DUK)、ドミニオン(D)、コンソリデーテッド・エジソン(ED)などは、株価収益率が10数倍台で、配当利回りが3%以上と安定した魅力を持っています。
公益事業株に対する個人投資家の関心
ディスカウント証券会社eToroの米国投資アナリスト、ブレット・ケンウェル氏によると、公益事業株は依然として他のセクターと比べて過小評価されているといいます。これは、金融サービスやテクノロジー、エネルギーなどと比較すると、個人投資家にとっての注目度が低いためです。
しかし、AI革命に伴い、電力需要が急増する中で、公益事業株は今後も投資対象として注目を集め続ける可能性があります。投資家は、割高感に注意しつつも、健全な配当を提供する企業に目を向けることが賢明です。