4月30日にアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が発表した最新の決算報告から、同社がAI製品ポートフォリオを支えるために行った投資拡大に伴うコストの増加が明らかになりました。特に、AMDのデータセンター用グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の粗利益率は、一般的なデータセンターの粗利益率よりも低い状態が続いています。これは、AI市場での競争力強化のための投資が影響しています。
AMDの株価は、この決算報告を受けて5月1日の取引で9%の下落を記録しました。カンター・フィッツジェラルドのアナリスト、C.J.ミューズ氏は、2024年度全体の収益レバレッジ(利益増加率)の見込みが市場予想を下回ることが投資家の失望の原因と指摘しています。
AMDのMI300アクセラレータの市場導入は「非常に印象的」と評される一方で、供給制約によりその機会が制限されており、高い投資家の期待を超えることができない状況です。このため、ミューズ氏は目標株価を190ドルから170ドルに引き下げましたが、引き続き「オーバーウェイト」の格付けを維持しています。
ベアードのアナリスト、トリスタン・ジェラ氏もまた、また、MI300のコスト増加を指摘しつつ、最終的には良いリターンが期待されるとしています。同氏は、AMDがAIプラットフォームに関する次世代アーキテクチャやソフトウェアへの投資を拡大することにより、今年の運営費用が予想以上に増加すると述べています。
ジェラ氏は、「MI300プラットフォームは、現在の大規模なAI投資のため、しばらくの間は(平均的なデータセンターの)合計よりも低い売上総利益率プロファイルを維持すると予想されるが、時間の経過とともに高くなると予想される」と付け加え、「アウトパフォーム」の格付けと200ドルの目標株価を維持しています。
アナリストは総じてAMD株に強気で、ファクトセットの調べではAMDをカバーしている49人のうち39人が買い相当の評価を行っており、決算発表後も擁護する声は多いままです。
ウェドブッシュのマット・ブライソン氏は、下落で示された市場の反応を「投資家は木を見て森を見ていない」と批判し、市場の期待には届かなかったものの2024年のデータセンター向けGPUの売上見込みを上方修正したことを、AMDがエヌビディアの主要なライバルとしての地位を固めつつあることを示すものとして評価しています。同氏はAMD株に対する「アウトパフォーム」の格付けと200ドルの目標株価を維持しています。
このように、AMDのAI市場への投資は短期的にはコスト増加として現れますが、長期的には同社の技術革新と市場での競争力強化につながる重要なステップと言えそうです。投資家にとっては、これらの動きを注意深く監視し、AMDの成長戦略を理解することが重要です。
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