近年、AI技術の進化とともに、個々のデバイスでAIコンピューティングを実行するクライアントAIの重要性が高まっています。2027年までには、この市場が500億ドルから1500億ドルのビジネスに成長するとの見通しもあり、ラップトップやスマートフォンがAIコンピューティングのデフォルト・プラットフォームになることが期待されています。このような背景の中で、インテル(INTC)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、クアルコム(QCOM)などの大手半導体メーカーが、この新しい市場でのリーダーシップを目指して競争を繰り広げています。
インテルのAI戦略とその差別化ポイント
インテルは、AIへの移行を加速させるために独自の戦略を展開しています。同社の新しい「インテル・コア・ウルトラ・プロセッサー・ファミリー」は、AIプロセッサーであるNPU(ニューラル・プロセシング・ユニット)を統合しており、2025年末までには1億ユニット以上を出荷するとの野心的な目標を掲げています。これは、AMDとクアルコムの合計出荷数の5倍に相当する規模です。
ソフトウェア開発者への支援拡充
インテルは、ソフトウェア開発者がインテル・プラットフォーム上で新しいAIワークロードやアプリケーションを最適に動作させることができるように、さまざまな支援を提供しています。昨年末には、「AI PCアクセラレーション・プログラム」を開始し、アドビやオートデスクなどの主要ソフトウェア企業だけでなく、新興企業や独立系アプリ開発者にも対象を拡大しました。このプログラムでは、開発者はインテルのエンジニアによる指導や販売支援のための資金を得ることが可能です。
さらに、インテルはソフトウェア開発者に対して、最新のインテル製チップとAIアクセラレータを搭載したミニPCを無償または割引価格で提供するプログラムを拡大しました。これにより、インテルのコンピューティング・プラットフォームが今年登場するAIツールのデフォルト・オプションとなる可能性が高まります。
長期的な収益化戦略
インテルは、このAI PC分野でのリーダーシップを確立し、最終的には財務的利益につなげる計画を持っています。インテルが開発者と協力して構築するsoftware-as-a-serviceのビジネスモデルは、PCチップの販売をさらに促進し、長期にわたってAI PC競争から利益を得ることを可能にしています。
まとめ
インテルは、AI技術の進化に伴う新しいチャンスを活かし、クライアントAI分野でのリーダーシップを目指しています。同社は、ソフトウェア開発者への支援拡充や、そのハードウェアを活用した新しいビジネスモデルの構築を通じて、競争に勝利することを計画しています。これらの戦略が成功すれば、インテルはこの新たな市場における覇者となることが期待できます。
*過去記事「中国の米国製チップ排除計画:インテルの真の課題は別に」