最強のAI企業はどこ? 3つの調査会社が明かすAI業界の勝者と敗者

ウォール街の専門家たちは、人工知能ソフトウェアの急速な普及に対応し、AI業界の勝者を見つけ出すためにこのところ懸命のようです。

ゴールドマン・サックスのポートフォリオ・マネジャー、ブルック・デーン氏が週末にチップメーカーのマーベル・テクノロジー(MRVL)とマイクロン・テクノロジー(MU)、クラウドデータウェアハウスのスノーフレイク(SNOW)、セキュリティソフト大手のパロアルトネットワークス(PANW)などを紹介するなど、AI関連銘柄への注目が高まっています。
AI(人工知能)とテクノロジー株:投資家が注目すべき企業とトレンド

しかし、この急速なAIの普及によって、どの企業が最終的に勝者となるのかについては、多様な見解が存在しています。ウォール街の調査会社3社は5月22日、AIがもたらす可能性のある勝者と敗者についての見解を公開しました。

TDカウエンの見解

TDカウエンのアナリスト、ジョン・ブラックレッジ氏が発表した包括的なレポートでは、生成AIのトレンドはインターネットの普及に匹敵する「記念すべき変化」になるとの見解が示されています。同氏は、2027年までに生成AIソフトウェアへの支出が810億ドルに達し、年間成長率が190%に達すると予測しています。

同氏が推奨するAI関連銘柄のトップ3は、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)です。

アルファベットとマイクロソフトは、AIソフトウェア市場で明確かつ早期に優位に立ち、両社とも検索をだけではなくそのソフトウェアポートフォリオ全体でAI機能の採用を始めています。また、エヌビディアは大規模な言語モデルの訓練に使用されるチップの明確なリーダーです。いずれの銘柄も今年に入ってから急騰しています。

この3つに続く銘柄としてブラックレッジ氏は、以下の名前をあげています。

アマゾン (AMZN)は、独自の大規模言語モデルに取り組んでおり、アマゾン・ウェブ・サービスの顧客に包括的なAIツールセットを提供しているため、AIの採用拡大が引き起こすはずのクラウドコンピューティングサービスの需要増から恩恵を受けるはずだと同氏は見ています。

メタ(META)も、生成AIソフトウェアへの支出を増やしていることから、その恩恵にあずかるはずで、特に、メタのソーシャル・ネットワークにおける広告販売の効率化をAIが後押ししてくれるはずだと、ブラックレッジ氏は考えています。

ブラックレッジ氏はまた、すでに新しい生成AIコンテンツ作成ツールを披露しているアドビ(ADBE)にも期待しているほか、オラクル(ORCL)にも言及。同社のクラウドコンピューティング・プラットフォームは、AIや機械学習によって引き起こされる「クラウドワークロードの成長の次の波を捉える上で、既存企業に対していくつかの競争優位性を持っている」と評価しています。

ニーダムの見解

ニーダムのアナリスト、N.Quinn Bolton氏は、勝ち組になりそうな銘柄として多様な企業の名前を挙げています。

同氏は半導体産業をAIコンピューティングの「ピックとシャベル」と位置づけています。ピックとショベル戦略とは、直接儲かっている部分に注力するのではなく、儲かるのに必要な部分に投資する戦略のことを言います。AIの流れは、エヌビディアのGPUだけでなく、センサー、メモリー、ネットワーク・チップ、その他さまざまな部品の需要を促進するはずだと同氏は見ています。

同氏が名前をあげたリストの中には、同氏がAIで「最も良いポジションの企業」と考えるエヌビディアだけでなく、マイクロン、自動車に使われる音声アシスト製品を作るセレンス(CRNC)、電源管理プレイのバイコー(VICR)とモノリシック・パワー・システムズ(MPWR)、ネットワークチップのマーベルとクレド・テクノロジー・グループ・ホールディング(CRDO)なども含まれています。

Bolton氏は、「AIアクセラレータなどの最先端チップを製造できる唯一の実用的ファウンドリ」と同氏が評する台湾セミコンダクター(TSM)にも強気です。そして、ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)やシノプシス(SNPS)など、電子設計自動化ツールを手掛ける企業もAI需要の高まりから恩恵を受けると見ています。

ネットワーク分野では、アリスタネットワークス(ANET)を「おそらくAIインフラ構築の主要な受益者の1つ」と評して同氏は評価しています。同社が大手クラウドプレイヤーと強固な関係を築いていることから、「この急成長分野では明確な優位性を持つ」と同氏は考えています。

「マシンビジョン技術の世界的リーダー」であるコグネックス(CGNX)にも同氏は強気です。同社が製品ポートフォリオ全体で深層学習ベースの技術の「展開を強化」していることを評価しています。

JMPの見解

JMPのアナリストであるアンドリュー・ブーン氏も、AIという技術はインターネット上で「勝者が最も多くを手にする」ダイナミクスを高めると断言しています。

このトレンドはソーシャルメディア・プラットフォームを後押しするはずだと同氏は考えており、「AIモデルはクリエイターのブレインストーミングを加速させ、編集ツールはよりパワフルで使いやすくなっている。我々は、これがクリエイティブなプロセスをさらに民主化し、ロングテール・コンテンツが増殖するソーシャルネットワークに直接利益をもたらすはずだと考えている」と同氏は書いています。

Bard、Bing、オープンAIのようなチャットボットの出現によってAIが答える検索が増えることで、「オープンウェブに悪影響を与える」可能性があると同氏は見ており、AIベースのチャットボットがクエリに回答できるようになることで、情報探索者が他のウェブサイトを見に行く回数が減ると考えています。

「これはアプリやダイレクトトラフィック、言い方を変えればブランドの重要性を高める一方で、ウェブのロングテールのビジネスチャンスを減少させる可能性が高い」と同氏はレポートに書いています。

特にブーン氏は、この傾向は「パブリッシャーのロングテールにとって悪い兆候」だと考えています。具体的には、コンテンツパブリッシャーのウェブサイトへのトラフィックを促進することを目的とした広告を販売しているタブーラ・ドットコム(TBLA)とアウトブレイン(OB)には潜在的なリスクがあると見ています。

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