マイクロソフト(MSFT)が提案している687億ドルのビデオゲーム大手アクティビジョン・ブリザード(ATVI)の買収について、大規模なテクノロジー企業の買収に対して一般的に非友好的な見方をしているバイデン政権がどう扱うか注目されています。
「マイクロソフト アクティビジョン・ブリザードを約700億ドルで買収」
バイデン政権によるハイテク企業に対する監視の目は、これまで、フェイスブックの親会社メタ(FB)とグーグルの親会社アルファベット(GOOGL)によるオンライン広告の支配、アップル(AAPL)とグーグルが運営するアプリストア、アマゾン(AMZN)のEコマースにおける圧倒的な地位、そしてフェイスブックとツイッター(TWTR)が社会的な言論で果たす役割などに向けられています。
一方、マイクロソフト(MSFT)はフリーパスを与えられていたような扱いでした。2020年6月に開催された米下院の反トラスト小委員会の技術的優位性に関する公聴会では、アップル、グーグルの親会社であるアルファベット、アマゾン、フェイスブックのCEOが登場しましたが、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは招待されてもいませんでした。
しかし、今回の買収により、マイクロソフトのビジネスへの注目度が高まることは間違いありません。
マイクロソフトは、時価総額が2兆3,200億ドルで、アップルの2兆8,100億ドルに次ぐ世界第2位の企業です。マイクロソフト自身が今回の買収を発表した際に指摘したように、今回の買収により、ゲームの売上高ではテンセントやソニー(SONY)に次ぐ世界第3位のプレイヤーとなり、米国を拠点とするプレイヤーとしては最大となります。
米連邦取引委員会と米司法省の担当者は、1月18日に共同記者会見を開き、政府の合併ガイドラインを見直すことを発表しましたが、マイクロソフトの買収案についてはコメントを控えました。
ウェドブッシュのアナリストであるダン・アイブス氏は、この取引についてのリサーチノートの中で、「規制の観点から見ると、マイクロソフトは他のハイテク企業(アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグル)ほどの監視を受けておらず、最終的にナデラ氏は、他の企業が規制の目にさらされ、このような資産を狙うことができない中で、消費者向けに大きな賭けをするチャンスだと考えたのだろう」と述べています。
しかし、ここには複雑な関係があり、規制当局は間違いなくこれを精査すると思われます。例えば、ATVIの「コールオブデューティ」などのゲームは、マイクロソフトのゲーム機「Xbox」の主なライバルであるソニーの「PlayStation」プラットフォームで人気を博しています。規制当局は、マイクロソフトがアクティビジョンのゲームをXboxに限定しないという保証を求めると思われます。
買収が発表されたあとの1月18日の市場でアクティビジョンの株価は一時28%上昇しましたが、83.76ドルという買収価格に対して約12%のディスカウントとなっています。その理由の一部は、買収が完了するのは2023年6月の会計年度になると予想されており、その期間が長いため、取引に不確実性が伴うからです。また、独占禁止法の審査のリスクがあることもディスカウントの理由かと思われます。
ソニーの時価総額が1,500億ドル未満であることから、買い手になる可能性は低く、700億ドル近い価格設定では、他の入札者はあまりいないと思われます。CNBCは18日朝、他の入札者がいないようだと報じました。
今回の合併が市場にどのような影響を与えるかについての市場の懸念を示すものとして、ソニーの株価は18日に2%以上下落しています。
今回の発表は、テイク・ツー・インタラクティブ(TTWO)がモバイルゲーム専門のジンガ(ZNGA)を127億ドルで買収することに合意したのに続くものです。市場はさらなる統合を期待するようになり、テイクツーの株式は18日に一時4.7%上昇し、エレクトロニック・アーツ(EA)は7.6%上昇しました。パリに上場しているUbisoftの株価は11.5%上昇しています。
米国みずほ証券のハイテクデスク・アナリストであるJordan Klein氏は、ユニティ・ソフトウェア(U)とロブロックス(RBLX)について「メタバース・プレイの次のテイクアウトの可能性として見られるだろう」と18日に書いています。
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