サイバー攻撃による米東部の燃料パイプラインの停止が続いている事態を受けて、今後の攻撃を防ぐための取り組みの強化で利益を得るセキュリティソフトウェアベンダー銘柄がウォール街で注目されています。
米連邦捜査局(FBI)が犯罪集団「ダークサイド」の犯行だと断定したサイバー攻撃でジョージア州アルファレッタに本社を置くパイプライン企業、コロニアル・パイプラインが操業停止に追い込まれました。
コロニアル社は、米国最大のパイプラインネットワークの1つであり、1日に約300万バレルのディーゼル、ガソリン、ジェット燃料を、米国東部の5,500マイルのネットワークで輸送しています。
RBCキャピタルのアナリストであるマシュー・ヘドバーグ氏は、5月11日に発表したリサーチノートの中で、今回の事件は、注目を集めている一連のサイバー攻撃の中でも最新のものであり、このような大規模な問題が発生した場合、官民ともにサイバーセキュリティへの支出を増やさざるを得なくなるだろうと述べています。
特に、エネルギー分野で、クラウドコンピューティングの導入が加速すると考えており、「基本的に、官民がデジタルトランスフォーメーションに取り組む際には、それに対応したセキュリティトランスフォーメーショが必要である」として、セキュリティの脆弱性に対処するために連邦政府の資金援助が増える可能性があると述べています。
このような背景から、クラウドストライク(CRWD)、オクタ(OKTA)、パロアルトネットワークス(PANW)、ジースケイラー(ZS)といった同氏がフォローしているセキュリティベンダーが、この種の攻撃に対応するための支出増から利益を得る可能性が高いと主張しています。
エバーコアISIのアナリストであるIrvin Liu氏は、今回の攻撃でどのような脆弱性が悪用されたかは今のところ不明であるものの、Zero Trust Network Accessセキュリティアーキテクチャなどの新技術を採用することで、最近の脅威から身を守ることができるはずだとしています。
この種の攻撃は今後も続く可能性が高く、「頻度と巧妙さを増していく 」と同氏は述べており、そのため、ITコストをセキュリティにシフトさせる動きが続くと予想しています。
同氏は、シスコ・システムズ(CSCO)、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(CHKP)、フォーティネット(FTNT)、パロアルトネットワークス(PANW)などに商機があると見ています。
レイモンド・ジェームズ社のアナリスト、パベル・モルチャノフ氏は、特に公益事業向けのハードウェアおよびソフトウェア・インフラストラクチャを提供するアイトロン(ITRI)に商機があると考えています。
アイトロンの一連のソフトウェアソリューションには、自社および業界のパートナーシップを通じたサイバーセキュリティが備えられているそうです。
また、ハッカーが重要なインフラを標的にしているという見出しが出るたびに、たとえそれが送電網に関係していなくても、公益事業の経営陣にとってはセキュリティ強化を検討する更なる動機となるだろうと予想しています。