2021年に飛躍が期待されるテラドック・ヘルス(NYSE:TDOC)ですが、その競争相手、ライバルはどうなっているのでしょう。その概要とテラドックとの力関係を見てみました。
アメリカン・ウェル
アメリカン・ウェルは米国のヘルスケア関連データプロバイダー。同社プラットフォームは病院、保険会社、患者をつなぎ、より手頃な価格で高品質のヘルスケアへのアクセスを実現。医療プランやデジタルケアプログラムを強化した遠隔医療プログラムの開発・配信を通し、さまざまな環境でのケア提供の実現を目指す。本社所在地はボストン。
出所:Yahoo! Japan ファイナンス
アメリカン・ウエルは、デジタルケアの提供を可能にするテレヘルス(遠隔医療)企業である。同社のAmwellプラットフォームを通じて、顧客は、在宅でのプライマリーケアや緊急ケアから、病院での遠隔ストローク(脳卒中ケア)や精神科領域における遠隔診療などの高度アキュイティ専門診療まで、完全で継続的なケアを提供することが可能になる。オンデマンド型と定期コンサルティング型の診療サービスを支援している。
出所:マネックス証券銘柄スカウター
アメリカン・ウェル(NYSE:AMWL)は、2020年9月にニューヨーク証券取引所に上場しました。ただ、遠隔医療業界の新しいプレーヤーではありません。設立は2006年。現在、2,000以上の病院を含む約62,000のヘルスケアプロバイダーに遠隔医療をサポートするプラットフォームを提供しています。
第3四半期(9月30日終了)の売上高は前年同期比80%増の6,260万ドル。同期間の総訪問数は140.14万件に急増し、前年同期比で450%の伸びを示しました。2020年全体では、経営陣は売上高が2億3900万ドルと、2019年の水準から60%の増加を見込んでいます。
収益性の面では、アメリカン・ウェルの営業損失(EBITDA)は2019年の7,270万ドルから2020年には1億500万ドルに膨らむ可能性が高いと見られます。11億ドル近くの現金および同等物があり、帳簿上の負債がないため、当面の間、成長のための投資に力を入れているためです。
アメリカン・ウェルで特筆すべきはグーグルとの結びつきです。アルファベット社のグーグル・クラウド部門と「バーチャルケアへのアクセスを変革し、拡大する」ために協力しています。
グーグル・クラウドは アメリカン・ウェルをグローバルな遠隔医療プラットフォームのパートナーとして選び、同社のIPO と同時にアメリカン・ウェルに 1 億ドルを投資しています。
アマゾン
えって思われるかもしれませんが、テラドックの一番のライバルではないかと言われているのがアマゾン(NASDAQ:AMZN)です。
アマゾンが遠隔医療に興味を持っていることはかねてより指摘されています。2019年、アマゾンは「Amazon Care」(ワシントン州にある同社の従業員とその家族を対象とした遠隔医療サービス)を開始しました。このサービスには、シアトル地域のアマゾン従業員や家族を対象に、バーチャルケアの訪問や処方箋の配達などが含まれています。
昨年12月には、アマゾンがAmazon Careの対象を広げる計画があるとの報道もありました。正式に遠隔医療分野に進出するとは発表されていませんが、アマゾンはすでにオンライン薬局でヘルスケア分野に進出しており、参入の可能性は十分にあります。
力関係
テラドック vs アメリカン・ウェル
現時点において両社の間には大きな差があります。売上、訪問件数、取扱サービスの豊富さなどテラドックが圧倒しています。アメリカン・ウェルは米国内に特化しているのに比べてテラドックが全世界でビジネスを展開していることも両社を隔ています。グーグルの支援があるアメリカン・ウェルの潜在力には注意を払うべきですが、この力の差は当面埋まることはないと見られます。
テラドック vs アマゾン
アマゾンは未参入ですので、具体的な数値に基づく比較はできません。ですが、その力がいかに恐れられているかは、昨年末アマゾン参入のニュースが流れた時にテラドックの株価が下がったことに如実に現れています。
チャンスや価値がある見とれば参入し、破壊的な力で既存のプレーヤーを駆逐するアマゾンの恐ろしさはよく知られたところです。ひとたび参入となれば、すぐに一定のシェアを確保し、存在感を強めて行くであろうことは容易に想像できます。遠隔治療の王者であるテラドックであっても一目を置かざるを得ないでしょう。
マーケットは巨大
ライバル関係にある3社ですが、1社総取りのようなゼロサムゲームの争いにはならないと思います。米国のバーチャルケア市場は巨大です。
コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは、COVID-19のパンデミックが終息した後、米国のバーチャルケア市場は年間2500億ドルに達すると予測しています。
複数の会社が参入しても十分にパイを分け合える巨大な市場となるのです。複数の勝者が並び立つ共存共栄の状況がしばらくは続くと見られます。