アマゾンがAI検索スタートアップを締め出す真の理由:580億ドルの広告ビジネスを守るための戦い

米国のテックメディア「ジ・インフォメーション」が2025年11月28日に報じた記事によると、アマゾン(AMZN)はAIを活用したショッピング検索スタートアップ「デュープ(Dupe)」をアフィリエイトプログラムの対象から除外するなど、外部AIツールに対する締め付けを強化しています。

一見すると、単なる競合排除やサーバー負荷対策のように見えますが、報じられた事実情報を詳細に分析すると、アマゾンが守ろうとしている核心的な価値と、eコマース業界で起きている構造変化への警戒感が見えてきます。

広告ビジネスというドル箱を守るための防衛策

今回の措置の最大の動機は、アマゾンの収益構造の根幹をなす広告ビジネスの防衛にあると考えられます。

記事によれば、アマゾンの年間広告収入は約580億ドルに達しています。この収益の多くは、ユーザーがサイト内を回遊し、検索結果に表示されるスポンサー商品(広告)をクリックすることで発生します。

しかし、デュープのようなAI検索ツールは、ユーザーの要望に合致した商品をピンポイントで提示し、アマゾンの商品ページへ直接誘導します。この仕組みでは、ユーザーはアマゾンのサイト内で「迷う(商品を比較検討する)」時間が減り、結果として広告を目にする機会やクリックする回数が激減します。

アマゾンがデュープに対して「アフィリエイト報酬の支払い」を停止し、パープレキシティなどの他社ボットを技術的にブロックしているのは、単なるデータスクレイピングへの対抗措置だけではありません。人間による「回遊」を前提とした高収益な広告モデルが、AIエージェントによる「効率的な購入」によって破壊されることを防ぐための、必要な防衛戦と言えます。

「人間」と「ボット」の境界線に対する厳格な姿勢

アマゾンはパープレキシティに対する訴訟において、同社のボットが人間に見せかけてアクセスしている点を問題視しています。また、11月4日の訴状では、広告主に対して「正当な人間によるインプレッション(表示)」のみを請求するために、自動トラフィックを除外するツールへの投資を行っているとも述べています。

これは、アマゾンがプラットフォームとしての信頼性を維持するために、アクセス主が「人間」か「AI(ボット)」かを厳格に区別しようとしていることを示唆しています。広告主から見れば、購買意欲のないボットが広告をクリックしても意味がありません。アマゾンが外部AIを遮断するのは、広告主に対する契約上の義務を果たし、広告媒体としての価値を維持するためには避けられない選択です。

競合他社との戦略の違いとアマゾンのジレンマ

興味深いのは、競合であるウォルマート(WMT)やターゲット(TGT)との戦略の違いです。ターゲットはオープンAIとの提携を通じて自社アプリをチャットGPT経由で利用可能にするなど、外部AIプラットフォームとの連携を積極的に進めています。これに対し、アマゾンは自社AI「ルーファス」の展開を優先し、外部との連携には慎重な姿勢を崩していません。

アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは将来的な協力の可能性を否定してはいませんが、現時点では「締め出し」が基本路線です。これには、アマゾンが圧倒的な「商品の検索起点」としての地位を築いているという自負があります。

しかし、消費者が「アマゾンで検索する」ことから「AIチャットボットに相談する」ことへ行動様式をシフトさせた場合、アマゾンの「囲い込み戦略」はリスクになります。競合他社がAIプラットフォーム上で存在感を高める中、アマゾンだけが孤立する可能性があるからです。

結論:投資家が注目すべきは「条件付き開国」のタイミング

現在、アマゾンは外部エージェントと「規制された方法」での連携について交渉中であると報じられています。これは、アマゾンがAIエージェントを完全に排除し続けることは不可能であると認識している証拠です。

今後の焦点は、アマゾンがどのような条件で外部AIに「開国」するかです。580億ドルの広告収入を損なわず、かつAI経由のトラフィックも収益化できる新たなモデル(例えば、AIエージェント専用の接続料や、API利用料など)を構築できるかが、アマゾンの成長持続性の鍵を握ると分析できます。

情報源:The Information (Nov 28, 2025) “Amazon’s AI Crackdown Hits More AI Search Startups”

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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