アルファベットの脅威で急落したエヌビディア。投資家が見落としている「パイの拡大」という本質

米国市場に新たな地殻変動が起きています。11月25日の市場では、エヌビディア(NVDA)の株価が一時4%以上急落する一方で、アルファベット(GOOGL)がマイクロソフト(MSFT)を抜き、時価総額で世界第3位に浮上しました。

市場を駆け巡ったのは「アルファベットのAIチップ(TPU)がエヌビディアの牙城を崩すのではないか」という懸念です。しかし、報道された事実を冷静に紐解くと、単純な「勝者交代」ではない、より巨大なAI市場の構造が見えてきます。今回はマーケットウォッチの報道を基に、この動きを深掘りします。
*関連記事「アルファベットがエヌビディアに“宣戦布告” TPUオンプレ進出でAI半導体覇権争いが激変へ

1. 「脱エヌビディア」ではなく「供給源の多角化」

今回のエヌビディア急落の引き金となったのは、メタ・プラットフォームズ(META)がデータセンターにおいてアルファベットのTPU(Tensor Processing Units)の使用に関心を示しているという報道でした。さらに、オープンAIもアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やブロードコム(AVGO)を通じてチップ調達を多様化させているという事実があります。

ここから読み取るべきは、エヌビディアの競争力が失われたということではなく、ハイパースケーラー(巨大IT企業)たちが「供給リスクの分散」に本腰を入れ始めたという点です。

分析: これまでエヌビディア一強だった市場において、アルファベットのTPU(ブロードコムが支援)が一定の成功を収め、メタのような他社にも選択肢として検討され始めたことは、確かにエヌビディアにとって独占的な価格決定権への挑戦となります。しかし、これは「エヌビディアが不要になる」のではなく、「エヌビディア以外も必要になる」というフェーズへの移行を示唆しています。

2. 市場のパイはまだ爆発的に拡大している

投資家が最も注目すべきは、競争の激化よりも「市場全体の需要」です。 事実として、メタは2026年の設備投資(capex)の伸びが、2025年よりも「著しく大きく」なるとの見通しを示しています。また、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは10月時点で、次世代プラットフォーム(ブラックウェルおよびルービン)により2026年までに5000億ドルの収益が見込める(visibility)と言及しています。

分析: もしAI市場が成熟しきっていれば、アルファベットの台頭はエヌビディアのシェアを奪う「ゼロサムゲーム」となります。しかし、メタの投資拡大計画やエヌビディアの強気な収益見通しを見る限り、AIインフラへの需要は依然として供給を上回るペースで膨張しています。 アルファベットのTPUが採用されたとしても、それは「溢れ出る需要の一部」を受け止めるに過ぎず、エヌビディアの成長ストーリー(2026年までの5000億ドル規模の視界)を根本から崩すものではないと考えられます。

3. 「汎用性」対「専用化」の戦い

エヌビディアは今回の報道に対し、「業界の一世代先を行っている」「全てのAIモデルを実行できる唯一のプラットフォームである」と反論し、アルファベットへのチップ供給も継続すると述べています。

分析: ここに重要な投資ヒントがあります。アルファベットのTPUのようなASIC(特定用途向け集積回路)は、特定のタスク処理において効率的ですが、エヌビディアのGPUが持つ圧倒的な「汎用性(Versatility)」とは異なります。 AIモデルが日進月歩で進化する現在、あらゆるモデルに対応できるエヌビディアのGPUは、依然として開発・学習フェーズにおける「共通言語」であり続けると言えます。アルファベットが自社チップを持ちながらもエヌビディアからの購入を続ける計画であること自体が、両者の共存が必要不可欠であることを証明しています。

結論:株価下落は過剰反応か

時価総額5兆ドル(11月3日時点)という高みに達していたエヌビディアにとって、今回のようなニュースによる調整は避けられないものです。しかし、ファクトに基づけば、「メタの設備投資増」と「エヌビディアの数年先の収益可視性」は揺らいでいません。

「勝者が一人勝ちする段階」から、「巨大な需要を複数のプレイヤー(エヌビディア、アルファベット/ブロードコム、AMD)が分け合う段階」へ移行したと捉えるのが自然です。その中で「一世代先を行く」エヌビディアの優位性が崩れると判断するのは時期尚早と言えます。


情報源: MarketWatch: “Nvidia’s stock drops on Google fears. Are investors missing the point?” (Published: Nov. 25, 2025)

※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。

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