レアアース関連企業の中で、MPマテリアルズ(MP)はここ数年で存在感を大きく高めています。今回、新たにサウジアラビアで精製施設を共同で立ち上げる計画が公表され、投資家からの注目が一段と強まりました。これは、鉱物資源をめぐる世界的な戦略変化を象徴する動きと言えます。
以下では、公表された事実を踏まえて、MPマテリアルズの将来性を整理します。
米国・サウジの協力が示す「供給網の再構築」
11月19日に明らかになった計画では、MPマテリアルズはサウジアラビアの資源大手であるマアデン(Maaden)、さらに米国防総省と協力し、サウジ国内にレアアース精製の合弁事業を立ち上げます。
合弁事業の持分は米国側(MPマテリアルズと国防総省)が49%、マアデンが51%以上を保有する構造です。また、事業運営は米国の安全保障方針と一致させる形で設計されることが示されています。
米国とサウジアラビアは重要鉱物の供給網確保で協力する方針を合意しており、これは「レアアースの供給リスクを複数地域に分散する」動きの一環です。
その枠組みの中でMPマテリアルズが中核的な役割を担っている点は、同社が地政学テーマの中心にいることを示します。
技術提供を担うという“質的な成長”
合弁事業の持分費用は国防総省が負担し、MPマテリアルズは資金ではなく技術的な専門性を提供します。提供内容には、レアアースの分離・精製技術のほか、調達や販売に関するノウハウが含まれています。
これは、MPマテリアルズが単なる鉱山会社にとどまらず、「高度な技術を持つ企業」として評価されていることを意味します。
さらに同社はサウジアラビアでの磁石製造に関する協議も進めており、川上から川下まで事業領域が拡大する可能性が生まれています。
最終製品に近い分野へ進出できれば、EVモーター、ロボティクス、防衛産業など需要の大きい領域に直接アクセスできるようになります。
これは長期的な収益力の向上につながる可能性がある重要な動きです。
株価の変動と「政策テーマとしての位置づけ」
今回の発表後、MPマテリアルズの株価は大きく上昇しましたが、年内の推移を見ると10月の高値からは大きく調整しています。このように短期的には上下動が激しい銘柄ですが、政策と連動した大型プロジェクトが複数進行している点は重要です。
具体的には、
- 米国防総省との契約でレアアースおよび磁石の生産力向上を進めている
- サウジでの新たな精製拠点を計画
- 米国とサウジが重要鉱物の供給網で協力する枠組みが強化されている
これらは、市況に左右されにくい「政策主導型のテーマ」であり、企業の中長期成長にとって強固な基盤となります。
関連銘柄にも波及するテーマ性
今回のニュースを受け、リチウム関連のリチウム・アメリカズ(LAC)やアルベマール(ALB)の株価が上昇した一方で、レアアース企業のUSAレアアース(USAR)は下落しました。
USAレアアースは政府と連絡を取っているものの、正式な契約には至っていないとされています。
ここには、「政策と直接結びつく企業」と「まだ関係が確立していない企業」への市場の評価の差が表れていると言えます。
MPマテリアルズが政策テーマの中で優先順位の高い企業として扱われている可能性が高まっています。
まとめ:MPマテリアルズは「戦略資源の要」として進化する段階に
今回の精製事業計画は、MPマテリアルズが地政学的な重要性をさらに高めていることを示す象徴的な出来事です。
- 米国とサウジの協力関係の強化
- 技術力を前面に出した役割拡大
- 川下領域(磁石製造)への可能性
- 重要鉱物供給網の再構築という世界的潮流
これらが重なり、同社は単なる採掘企業から「国家戦略を支える技術企業」へと進化する段階に入っています。
短期の株価変動に注目が集まりがちですが、長期的にはサプライチェーンの大転換によって得られる恩恵がより大きな意味を持つ企業と言えます。
出典(情報源):
MarketWatch,
“MP Materials gets another government deal, this time in Saudi Arabia” (2025年11月19日)
*過去記事「レアアース覇権争いの中心へ:MPマテリアルズに起きている変化」
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