米国のインフレ高止まりが続く中、多くのセクター、特に食品・外食関連企業は深刻な原材料コストの高騰に直面しています。投資家にとっても、各社の利益率(マージン)の悪化は悩ましい問題でした。
そんな中、2025年11月15日、企業のコスト構造に直接影響を与える可能性のあるニュースが報じられました。
報道:一部の輸入農産品の関税を撤廃
米国の投資情報誌バロンズ(11月15日付)によると、トランプ大統領は金曜日遅く、米国内で十分に生産されていない特定の輸入農産品(牛肉、コーヒー、アボカド、ココナッツなど)に対する関税を撤廃する大統領令に署名しました。
これまで、これらの品目の価格高騰は企業の業績を直撃していました。バロンズは、この1年間で牛肉価格が16%、コーヒー価格が19%上昇したと指摘しています。
コスト高の影響を受けていた企業
実際に、直近の決算ではコスト増の影響が数字に表れていました。
バロンズが報じた例をいくつか挙げると、
- スターバックス(SBUX): 営業利益率が前年比5ポイント低下し9.4%に。
- JMスマッカー(SJM): リテールコーヒー部門の利益率が9ポイント低下。
- シェイク・シャック(SHAK): 牛肉価格の「10%台半ば」の上昇に直面。
- ビタ・ココ(COCO): 輸入ココナッツウォーターに約23%という高額な関税が課されていた。
これらの企業にとって、今回の関税撤廃はまさに「干天の慈雨」と言えるかもしれません。
考察:投資家として注目すべきポイント
今回の政策変更は、単なる一時的なニュースではなく、対象企業の根本的なコスト構造の改善につながる可能性があります。
バロンズの記事でも、上記の企業が恩恵を受ける可能性のある銘柄として挙げられていました。
今回の政策変更を受け、投資家として注目すべきポイントは以下の2点です。
- 利益率の「V字回復」は可能か? スターバックスやJMスマッカーのように、コーヒー価格高騰の影響を直接受けていた企業の利益率改善は期待されます。ただし、関税が撤廃されても、根本的なインフレ(人件費、物流費など)が続いているため、これで「全てのコスト問題が解決」と考えるのは早計かもしれません。
- 最も恩恵が大きいのはどこか? ビタ・ココのように、「23%」という具体的な高関税率が明示されていた企業は、撤廃による直接的な恩恵が最も大きいと考えられます。コスト削減分を、値下げによるシェア拡大に使うのか、そのまま利益として計上するのか、今後の経営戦略が注目されます。
まとめ
今回の関税撤廃は、食品・外食セクターにとって明確なプラス材料です。これまでコスト高を理由に同セクターへの投資を見送っていた投資家にとっては、改めて投資対象として見直す良い機会となります。
ただし、政策の効果が実際の業績(EPSなど)に反映されるまでには時間がかかります。今後発表される各社の四半期決算で、利益率がどの程度改善したかをしっかり確認していくことが重要です。
出典
- Avi Salzman (Nov 15, 2025). “7 Stocks That Could Benefit From Trump’s Tariff Rollback”. Barron’s.
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