ロビンフッドが「現金当日配送」を開始。真の狙いは富裕層囲い込みか

  • 2025年11月17日
  • 2025年11月17日
  • BS余話

ロビンフッド(HOOD)が配送アプリのGopuffと組み、現金を当日に自宅へ届けるサービスを開始しました。ニューヨーク市で先行導入され、利用にはロビンフッド・ゴールド会員であることが条件です。配送時間は約30分、料金は2.99〜6.99ドルとされています。2026年には主要都市へ拡大する計画も明らかになっています。

このサービスは一見すると「便利な新機能」に見えますが、背景にはロビンフッドが狙う顧客層の変化と、金融サービス全体の競争環境の変化があります。


ロビンフッドが狙うのは「富裕層の取り込み」

今回のサービスは、ロビンフッド・ゴールド(月額5ドル)加入者かつ毎月1,000ドルの直接入金がある口座が対象です。さらに、10万ドル以上の資産を預ける利用者は手数料が2.99ドルに優遇されます。

これは明確に、
「高資産ユーザーの囲い込み」
を目的とした設計といえます。

実際、ロビンフッドは既に純資産管理や税務相談、遺産計画、さらにはプライベートジェットやイベント予約までできる“富裕層向け”アプリを別途提供しています。現金配送はその延長線上にあり、“プライベートバンキングに近い体験”を追加する動きと読み取れます。

ロビンフッドはこれまで「若年・少額投資家向け」イメージが強かったですが、今回のサービス構造はその転換を象徴しています。


ATMに行かない時代が来るのか

このサービスの料金(2.99〜6.99ドル)は、米国のアウトオブネットワークATMの平均手数料4.86ドルと大差がありません。
ユーザーは時間節約の対価として、「ほぼ同じ価格」で現金を自宅に届けてもらえる計算になります。

つまりロビンフッドは、

  • 「現金の利用頻度は減っても、完全にはなくならない」
  • 「必要なときに素早く現金を入手したいユーザーは一定数いる」

という現実に着目しています。

米国では、18〜49歳の45%しか現金を持ち歩いていない一方、キャッシュレス化が進んでも現金取引の平均回数は月7回で横ばいというデータがあります。
「現金は減っていない」という事実が、今回の参入の土台になっています。


株価への影響は短期的には中立

サービス発表当日、ロビンフッド株は8.6%下落しました。ただし、過去12ヶ月で株価は274%上昇しており、より大きなテーマ(取引量増加、予測市場ビジネス、Bitstamp買収など)が株価を動かしている状況です。

つまり今回の「現金配送」は、
短期株価に大きな影響を与える材料ではない
という構図です。

しかし長期視点で見ると、ロビンフッドが「高付加価値の金融サービス企業」へ転換を図っている可能性はあり、そこに投資家がどこまで成長ストーリーを見出すかは今後の焦点になります。


Gopuffとの提携が持つ意味

Gopuffは2億5,000万ドルの資金調達を行い、その出資者にはロビンフッドも含まれています。
つまり今回の提携は「単なる業務連携」ではなく、より密接な資本関係によるサービス統合の第一歩と言えます。

Gopuffは食品・酒類・日用品などの配送に強みがありますが、現金配送は同社にとっても“高価値商品”を扱う新領域です。
ロビンフッドは配送インフラを使い、Gopuffは高収益の新カテゴリを獲得する——両社の狙いは一致しています。


今後の展開:2026年の都市拡大に注目

現金配送は現在ニューヨークのみですが、2026年にサンフランシスコ・フィラデルフィア・ワシントンD.C.に展開予定です。
これらは富裕層の割合も高い都市であり、ロビンフッドが意図的に市場を選んでいることがわかります。

もしこれらの都市で高い利用率が確認されれば、ロビンフッドの銀行サービス戦略が本格化し、より高価格帯の金融プロダクト(融資、積立、保険等)へ進む可能性もあります。


まとめ:ロビンフッドは“投資アプリ”から“富裕層向け金融プラットフォーム”へ

今回の現金当日配送は、単なる「便利機能」ではなく、

  • 富裕層の囲い込み
  • 金融サービスの高付加価値化
  • Gopuffとの資本・業務連携強化
  • 銀行サービス拡張の布石

といった複数の戦略が動き始めたシグナルと位置づけられます。

今後の株価に直結するかは不透明ですが、ロビンフッドが新しい金融プラットフォームとして存在感を高める動きは長期的に注目に値します。


出典:Robinhood rolls out same-day cash delivery to your door so you don’t have to go to an ATM anymore(MarketWatch, Nov.15 2025)

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