米ソーシャルメディア大手のメタ・プラットフォームズ(META)の株価が、8月以降で20%以上下落し、ミニベアマーケット入りしました。AI関連支出の急増が投資家心理を冷やしています。
広告収入は好調でもAI投資が利益を圧迫
2025年第3四半期、メタの広告収入は前年同期比26%増の501億ドルと過去最高を記録しました。フェイスブック、インスタグラム、スレッズなど主要プラットフォームの利用時間も増加し、事業基盤は堅調です。
一方で、AI開発への支出が急拡大しています。9月までの3か月間でAI関連の設備投資は188億ドルに達し、前年の2倍以上。通年では最大720億ドルに膨らむ見通しです。こうした積極的な投資が利益率を圧迫し、株価下落の一因となっています。
大規模な資金調達と「Beignet Investor LLC」
メタはこのAI投資を支えるため、過去最大規模の社債発行で約300億ドルを調達しました。さらに、ルイジアナ州のAIデータセンター建設を目的とする特別目的事業体(SPV)「Beignet Investor LLC」を通じ、プライベートエクイティ投資家から270億ドルを追加で引き入れました。これにより、同社の総AIインフラ投資額は過去最高水準に達しています。
「スーパーインテリジェンス」構想と利益懸念
マーク・ザッカーバーグCEOはAI戦略を「スーパーインテリジェンス」構想と位置づけ、優秀なAI人材を積極採用しています。しかし、オッペンハイマーのジェイソン・ヘルフスタイン氏は、投資家は「これほどの支出がどのように利益へ反映されるのか」を依然として理解していないと指摘しています。来年の利益成長率は3%程度にとどまる見通しで、同業他社のアルファベット(GOOGL)の25%と比べて大きく見劣りします。
メタバースの記憶とAI投資への警戒感
過去5年間で700億ドル以上を費やしたメタバース事業が期待外れに終わった記憶が、投資家の慎重姿勢を強めています。AI投資が長期的な収益化につながるという確信がまだ十分に得られていないため、市場の反応は冷ややかです。
「ハイパースケーラー」のように支出、しかし収益構造は異なる
メタのAI支出規模は、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン(AMZN)、アルファベットといったハイパースケーラーと同水準に達しています。しかし、これらの企業がクラウドサービスとして外部顧客から収益を得ているのに対し、メタは主に自社サービス向けの内部活用にとどまっています。この構造的な違いが、投資家の不安を増幅させています。
株価の先行きと投資家心理
メタの株価は決算発表後の1週間で約20%下落し、ナスダック指数の4倍に達する下げ幅となりました。リソルツ・ウェルス・マネジメントのジョシュ・ブラウン氏は「市場が企業の説明を信じきれていないことを示しており、これは健全な調整だ」と述べています。
投資家の間では、AI投資が利益改善に結びつかない場合、さらなる株価下落が続く可能性があるとの見方も広がっています。
まとめ:AI投資のリターンが問われるメタ
メタはAI時代の主導権を握るべく巨額の投資を続けていますが、現時点ではそのリターンが見えにくい状況です。AIによる業務効率化や広告最適化がどこまで利益成長につながるか、今後数四半期が試金石となりそうです。
*過去記事 メタ・プラットフォームズ